DARKSIDE OF BUDDA



舞台には鋼鉄の椅子が一つ
青い照明を浴びている。
音楽が流れ
受付で渡された様々の仮面を付けた観客が
薄暗い場内に入ってくる。
音楽が消え
照明も落ちた場内に
香の匂いが漂い
かすかな鈴の音が聞こえる。
もつれ合い、絡み合う気配・・・
羽ばたき・・・
それらの雰囲気が次第に濃厚に結集し
今、舞台には手に明かりを持つ2羽の神鳥ガルーダがいる。
ゆっくりと明かりを腕一杯の高さに掲げた2羽。
壮麗に音楽が始まり、
2羽はそれぞれに明かりを掲げながら
観客一人一人を嘴が触れ合うほど近寄って見定める。
2羽の神鳥が近くを通ると
極楽を思わせるような香りがする。
やがて1羽の神鳥が一人の女性客を見いだし身体を振るわせる。
鈴の音がする。
もう一羽がやって来て女性を立たせ舞台へと誘う。
女性を椅子に座らせ、妖しげな液体を口移しで与える。
1羽が唇と舌を絡ませている間に
もう1羽が女性の服を脱がせ
鋼鉄の椅子に縛り上げている。
2羽の神鳥が女性の全身を愛撫しながら
その肌に札を貼って行く。
最後にもう一度口移しで液体を呑ませると
女性は凍り付いたように動かなくなる。
女性の束縛を解き
暗黒仏陀経の書かれた長い布で全身を巻いて
椅子の前に横たえる。
2羽、再び客席へ降り立つ。
今度は男性を捜している様子。
スキンヘッドのヤクザっぽい男性を見つける。
連れて行こうとするが
首を振り、動こうとしない。
1羽が妖しく絡みつき注意をそらしている内に
1羽が馬の仮面を被せると
楽器の大きな音がして
男性おとなしくなる。
2羽のガルーダは男性を椅子に縛り付ける。
ナイフでシャツが切り裂かれると
筋肉質の肉体が現れる。
シャツを剥ぎ取られ半裸となった男の肌に
深い紅色の花弁と小さな鈴を備えた造花の薔薇が
肌を埋め尽くすほどに貼り付けられる。
ガルーダの1羽が4本の触手を持つ鞭をふるう。
薔薇の花が火花のように散り、鈴が甲高い悲鳴を上げる。
男の躰が揺れ動き音楽が高まって行く
それと共に布を巻かれた女性の躰が妖しく波打ち始める。
最後の鞭が男の躰に巻きつき、男はがっくりと動かなくなる。
一羽が女の足のつけねにナイフを刺してグラスに血を受け
男の股間に注ぐとムクムクと大きくなる
男にまたがり交合するガルーダ・・・
女の傷口にさし込んで交合するガルーダ・・・
馬の仮面を取り去ると男の顔は妖しく変容している。
眼を射る逆光の中、
ガルーダのあえぎの如き妖しい鳴き声が
暗闇と共に空間に満ちて行く。
鳴き声は次第に“OM=オ〜ム”の合唱に変わる。
最早、明かりはなく、気配で
何かが空間に満ちていくのがわかる。
瞬間閃光が、部屋を埋め尽くす巨大な物体を映して消える。
やがて暗闇が退いてゆき
何もかもが夢だったように
そこには何もない


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