NOCTILUCA SCINTILLANS(2006大阪公演版)脚本

作・構成 BOSS

 
【登場人物】
@女性(ユウコ)・・・・・・・・・・・・・・・・・KILL
AA(男・サメ・タコ・ペンギン)・・・・・・BOSS
BB(男・クラゲ)・・・・・・・・・・・・・・・・・EQUUS
CC(波)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・LUCIFER
 
【録音】
@BOSS
AYAKO
BASSASSIN

【即興音楽】
 赤田晃一(SAX,PARC.)
 山口智(ハンマーダルシマー)
 
Rrose−selavy(VOICE) -30日
 児嶋佐織(テルミン) -1日
 
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    観客に適当な暗さで光束の集中したライトを配って置く。
    青いフィルタを付けるか?数は多いほど良い。
    「観るためにお使い下さい」とだけ言って置く。
(観客の耳に付ける筒も考えてみる・・)
 
    音楽が始まる。
    ゆっくりと客席が闇に墜ち、波の音が空間を包む。
    額にライトを付け、顔を隠した男(A,B)が二人、
    目隠しされた全裸の女性(の死体?)を運んできて舞台に横たえる。
    心臓の音を聴き、呼吸を確かめて去る。
 
ナレーション(男声)・・携帯で話す声
 「はい、折り返し点に到着いたしました。これからゴールを目指します。
  夜の海面に渡る風は涼しく、ノクチルカ・シンチランスが瞬いております。
  はい、無事完走を目指します。」
 
(波を演じるCが女性の周りを廻り、やがて取り憑く)
    波の音大きくなり、女性の肌を洗い、満ちて空間を水で覆う。
    くぐもった波音がゆっくりと遠ざかって行く。
    
 
    サメ(A)が現れて女性の死体をつっつく。
    サメ、女性の上に乗って何かしている。
    その刺激は情交として死体に認識される。
 
 
父親?の声
 「おめえは最高じゃ。
  最高の女じゃ・・
  わしゃぁ他の女じゃおえん・・
  おめえだけじゃ・・
  おめえだけがわしを・・・
  おう!おう!おう!」
女性の声
 「ああ逝きそう、逝っちゃう、
  逝く、逝く逝く・・
  来て!来て!お願い・・お父さん!」


 
女性の声
 「My father created me.
  My father loved me.
  My father broke me.
  My father created me.
  My father loved me.
  My father broke me.....」



女性の声
 「お父さんさえいれば
  何も必要なかった・・
  お酒もシンナーもクスリもSEXも」
 
    サメ、女性の股間に大粒のキャビアを残して去る。
    女性、上体を起こしてそれを頬張っている・・
 
女性の声・独白
 「一体どうしたんだろう・・・
  あのサメは雌だったのかしら?」
女性の声・独白
 「What on earth happened?
  Why has my father left?」
 
恋人?の声
 「何を食べてるんだ?」
 
    クラゲ(B)が現れる。
 
恋人?の声
 「そんな物を食べるんじゃない・・こっちへ来い。」
 
    ポロポロとキャビアを転げ落としながら立ち上がり
    クラゲに歩みよる女性。
 
女性の声
 「あなたは私の何なの?」
恋人?の声
 「恋人・・じゃないのか?・・ほら・・」
 
    クラゲ椅子に腰掛ける。
    触手の間からペニスに似た物を屹立させ女性の顔を近づける。
    女性、ペニスを掴んだまま、
    顔を上げてクラゲの顔をしばらく見つめている。
    クラゲ、触手で女性の頬を張る。
    女性、まだ見つめている。
    クラゲ、女性の頬を張る。
    女性、ゆっくりと顔を下ろしてペニスをくわえる。
    クラゲの呼吸が荒くなる。
    クラゲ、射精したらしい。呑み込む女性。
 
恋人?の声
 「立って開け」
 
    立ち上がった女性の乳房を愛撫し、
    股間に指を差し入れたクラゲ。
    その手が止まり、ゆっくりと離れる。
 
恋人?の声
 「・・・取れ」
 
    女性が指を入れるとそこからキャビアが次々と生まれて墜ちる。
    クラゲ、女性を押しのけて立ち上がる。
 
恋人?の声
 「・・もういい・・私は帰る。お前はここでそのまま待っているんだ。
  人が来る。私がこれからお世話になる人だ。
  その人の言うことを聞きなさい」
女性の声
 「待って・・あなたが好きなの・・あなたを愛しているの・・」
 
    クラゲ、穴が開くほど女性の顔を見つめる。
 
恋人?の声
 「愛している?・・・お前が私を・・・?笑わせるんじゃない。」
 
    クラゲ、女性を足蹴にして去る。
    舞台に巨大なタコ(A)が出現する。
    タコ、葉巻を吸っているどうやら権力者であるらしい。
 
権力者?の声
 「君が、あの・・・君かね?私が・・その・・・私だ・・
  話は聞いていると思うが、
  何、悪いようにはしない。何も心配することはない。
  大丈夫、大丈夫・・」
 
    と、言いながら吸い付いてゆくタコ。北斎の春画のように。
 
女性の声
 「いや・・・・い・や・だ!・・いやだ、嫌だぁーっ!」
 
    女性の手にナイフが・・
    股間に差し込まれているタコの触手を斬る。
    タコ猛烈に苦しみのたうつ。
 
権力者?の声
 「あー・・あー・・あー・・○○○○を斬られた・・あー・・」
 
    女性、ナイフでタコの性器である触手を切り刻む。
    タコ、もんどり打ちながら去ってゆく。
    女性触手を細切れにする・・それを両手で持つ・・と。
    視線を感じて振り返る。
 
母親?の声
 「どしたん?そのタコ・・買うてきてくれたん?
  いやー気がきくわぁ、ちょうどタコ焼き焼きょーるとこじゃったんよ」
 
    母親(ペンギン?・・B)、たこ焼きを焼いている。
    女性の手からタコの細切れを奪い取る
 
母親?の声
 「あんた何か用で帰ってきたん?食べる?」
 
    たこ焼きを口に入れようとする・・
    たこ焼き墜ちて転がるが母親気付かない。
 
母親?の声
 「もう出ていかんのじゃろ?家に居てくれるんじゃろ?
  お父さんも喜ばあ、
  帰ってきたらもう殴ったりせんゆーて言ようたし・・
  なあ、居ってくれるんじゃろ・・・・・・返事は?何で黙っとるん?
  あんた・・・まさか出て行くんじゃ無えじゃろな!
  ちょっとあんた、
  そんなつもりなんじゃったら、さっきのたこ焼き返されぇ!」
 
    墜ちたたこ焼きを指さす女性
 
母親?の声
 「なんであんな所に捨てとん?
  あんた、私の焼いたたこ焼きはマズうて喰えんゆうことかな!」
 
    女性、悲しげにかぶりを振る。
 
母親?の声
 「ユウコ、あんたがおらんとお父さんが荒れて、
  もう家の中あ滅茶苦茶じゃ。
  あんたが出て行くまではお父さん、
  家へお金も入れてくりょーたのに・・・
  あんたゆー人は、自分の事しか考えんのかな!
  あたしがどうなってもええんじゃな!」
 
    女性、母親(ペンギン)に迫る。
    凍り付いた母親にゆっくりと顔を近づけ
    その口を唇で塞ぐ。その身体を愛撫する。
    ・・やがて女性の股間に男性器が生え、母親(ペンギン)を抱きしめる。
 
女性の声
 「ねえお母さん、私を生んで・・
  もう一度私を生んで・・・
  そして・・今度は私を・・」
母親?の声
 「・・・あっあっあっあっ・・・
  ゆうこ・・ゆうこ・・ゆうこ!
  ゆうこぉーっ!」
女性の声
「Giving birth, mother.
 Please give birth again.
 And, please love me this time.
 Giving birth, mother.
 Please give birth again.
 And, please love me this time.....」
 
 
 
    ペンギン突っ伏して動かなくなる。
女性立ち上がる。
 
女性の声
 「気が付くと私は波打ち際にいました。
  沖遙か水平線を越えて流れ落ちる銀河のしずくのように
  波が私に打ち寄せるたびにキラキラと夢のように光っていました・・
  ああ、これは夜光虫なんだこの青白く光る小さな虫が
  幾万匹も私の体内に潜んでいて
  夜毎、私にこんな夢を見させているんだ・・
  こんなに居るのなら仕方がない
  こんなに居るのなら仕方がない
  こんなに居るのなら仕方がない
  そう思うと何だか心が落ち着いて
  左の乳房の下辺りから心臓の音が聞えてきました
  ほら、あたしはいきているじゃない
  ほら、あたしはこんなにもいきているじゃない・・」
 
    女性、目隠しを外すと顔にも
    ブレードランナーを想起させるような目隠し状のメイクをしている
    にっこり笑って立ち上がり、客席の間を通って劇場から日常へと侵入する。
 
 
音楽続いてゆく。
やがて客席がゆっくりと明るくなる。