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0-1:google-earthの動画 イスラエルのティベリアへ ズームアップ 字幕等出る。 |
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■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 |
0-2:オーバーラップして 庭園の林の木々がズーム、 左右に分かれて天プラ屋上 数名の兵士と若いシリア人 ヘロディアスの召使い |
【ヘロデ王の宮殿。 宴の間の上に設定された素晴らしいテラス、 緑青色の銅の壁に囲まれた古い水槽が舞台奥に。 月が冴え渡っている。】 ←出来れば足場か脚立を立てて上から撮りたい。 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い |
1-1:雲間を行く月 ズームダウン&パンダウン 横を向いているシリア人の 顔を月に向ける召使い。 |
シリア人 「今夜のサロメ様の美しさといったら…」 召使い 「月を見て…なんて不思議な姿…墓から蘇った女の様。 まるで死んだ女…きっと「死」を探しにきたんだ…」 |
□月 ____________ ■サロメ |
1-2:画面に広がる月 次第にオーバーラップする ぼんやりとしたサロメの姿 踊り始める。 |
シリア人 「不思議な姿だ…白銀の足を持ち 黄色いヴェールを纏った小さな王女様の様だ… 小さな白い鳩の足を持った王女様… きっと踊ってらしたに違いない…」 |
■サロメ ____________ □月 |
1-3:ゆっくりと腕を上げるサロメが上下反転して。 月がオーバーラップする中 薄れてゆく |
召使い 「まるで死んでしまった女… 恐いくらいゆっくりと動く…」 論争する声が聞こえてくる。 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 |
2-1:月を眺める二人から フォーカス送りして二人の 兵士 |
第1「なんて声だ!野獣のように吠えてるのは誰だ?」 第2「ユダヤ達さ。お決まりの宗教論争だ。」 第1「なんであいつらは騒ぐんだ。」 第2「いつもの事だ…パリサイ人が天使は居るというと、サドカイ派は居ないという…」 |
■バリサイ人 ■サドカイ人 |
2-2:屋上出口の処で論争するパリサイ人とサドカイ派 サドカイがバリサイの付けている天使の輪と羽根を むしり取る。 |
第1の兵士 「くだらん論争だ。」 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い |
3-1:シリア人、王女の方を 向いている。 召使い、シリア人の背中に 寄り添って。 シリア人のきらきらした顔。 |
シリア人「今夜のサロメ様はなんて綺麗なんだ…」 召使い「あんたはいつも…王女様ばっかり…見てる… そんな風に人を見つめるのは恐い…怖ろしいことが起きるかも… シリア人「…凄く綺麗に見える。」 |
■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
4-1:王の顔のアップ その両目の中で 第1の兵士と第2の兵士が 会話している。 |
第1「王は不機嫌そうだな」 第2「ああ…。」 第1「何か見てる…」 第2「ああ、誰か…」 第1「誰?」 第2「知るもんか。」 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い |
5-1:シリア人と召使い 正面から 召使い、シリア人の眼を 後から両手で隠す。 |
シリア人「王女様は何て蒼い顔をしておいでなのだろう…あんな王女様は見たことがない。銀の鏡に映った白い薔薇のようだ… 召使い「もう見ちゃ駄目…」 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 ■カッパドキア人 |
6-1:屋上の遠景 屋上の建て屋から? ヨカナーンの歌 |
♪強き方がやがて来られる その方ともし比べるのなら 私はその方の靴紐の留具 ほどの価値も無いくらいだ その方がもし来られたなら 寂れた大地も薔薇と花咲く見えぬ目も見よ 音にも聞け 赤子は立って獅子を倒せ |
■兵士 1 ■兵士 2 ■カッパドキア人 |
6-2:声の方を向いた二人の兵士の間からカッパドキア人が顔を出す |
カッパ「これは何者の声なんですか?」 第1「予言者さ。」 カッパ「名前は?」 第1「ヨカナーン。」 カッパ「どこからやって来たんだい?」 |
(砂山ロケ) ■ヨカナーン ■弟子×6人 |
7-1:夜の砂漠を歩いているヨカナーンのイメージ 丘を越えて来る。 後へ続く者達の頭が見えてくる。皆、頭に布を巻いて。 |
第1「砂漠でバッタや蜂蜜を食べてたんだ。 ラクダの毛で出来た着物を革のベルトで締めていた。 そりゃあ非道いナリだったがスゲエ数の群衆があの人に従ってた。弟子も持ってたさ。」 |
■兵士 1 ■兵士 2 ■カッパドキア人 |
7-2:7-1から6-2アングルへオーバーラップ カッパ、カメラ方向へ歩く |
カッパ「あれは…何を言ってたんだ?」 第1「わからんよ。時々凄く怖ろしい事を言うが… 理解不能だ。」 カッパ「彼を観た者は?」 第1「…王が禁じてるからな。」 |
■兵士 1 ■兵士 2 ■カッパドキア人 (カメラ ピロティー) |
7-3:吹き抜けの角を上から 覗き込むカッパ。 そこへ2と1が顔を出す |
カッパ「(貯水槽を見て)こりゃあ…不思議な牢屋だな…」第2「元は貯水槽だ。」 カッパ「古い貯水槽か…!健康に悪そうだな…!」 第2「いいやちっとも…現にヘロディアスの前の旦那、王の兄の前国王は、ここに12年棲んでいた。 |
すこぶる元気だったよ。 最後は首を絞めなきゃならないくらいにね。」 カッパ「前国王を絞め殺す?そんな怖ろしいことを誰が!?」 |
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■兵士 2 ■カッパドキア人 ■ナーマン |
7-4:吹き抜けの別の角に 立つナアマンへ二人から フォーカス送り。 アップへとオーバーラップ |
第2「あの男…ナーマンだ。」 カッパ「恐くなかったのかな?」 第2「全然…王が指輪を渡したからな。」 |
■ヘロデ |
8-1:物憂げにワインを飲んでいる王の指に光るドクロの付いた指輪へズーム。 |
カッパ「指輪?」 第2「『死の指輪』だ。だから奴は怖がらなかった。」 シリア人「王女がお立ちになった…テーブルを離れて… |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い |
9-1:シリア人達の方へ 近づいてくるサロメ |
表情が曇っている…こっちへ来る!…なんて白い顔だ…あんなに蒼ざめたのを見たことがない…」 召使い「見てはダメ!お願いだから!」 シリア人「迷子になった鳩のようだ…風に揺れる水仙…銀色の花のようだ…」 |
■サロメ ■若いシリア人 |
9-2:ベンチの一つに腰を下ろす王女 近づくシリア人、サロメ、ベンチに立って唄いだす。 |
サロメ「嫌だ…あんなところにこれ以上居られるもんか。 王のモグラみたいな眼のネットリした視線…お母様の夫なのに…一体どういう意味?…まあ…判ってるけど。」 シリア人「王女様、晩餐はもうよろしいのですか?」 |
■サロメ |
9-3:サロメの歌 「息が出来たの」1番 クラブ映像?フラッシュ |
♪息が出来たの 此処の空気で 中はとても酷い有様 罵り合う ユダヤ人たち ワイン撒くのは野蛮人 いかれた服のギリシャ人に 無口で怖いエジプト人 ローマ男は 残忍で粗野で 色事の話が大好きで 中はとても酷い有様 息が出来たの 此処でやっと |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い |
9-4:シリア人が唄うサロメに話しかけているのを、離れて見つめる召使い。 |
-間奏へ入る- シリア人 「どうか、席におつき下さい王女様。」 召使い「何で話しかけてるのだろう?!よくない事が起きる…きっと…」 -間奏終わる- |
■サロメ |
9-5:サロメの歌 「息が出来たの」2番 |
♪息が出来たの 素敵な月を 眺めてやっと息が出来た 夜空のコイン 銀の花びら 汚れ知らぬ清らかな乙女 肌を曝して誘ったことも 身体を投げて与えたことも 一度も無い気高い女性(ひと) 何処かの誰かとは大違い 素敵な月を眺めてやっと 息が出来たの 此処でやっと |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 ■カッパドキア人 |
9-6:屋上にヨカナーンの歌が流れる |
♪見よ!主は来ませり 人の子を手に 森のケンタウロス 川に潜み 川を出たニンフは 枯葉の下に 見よ!主は来ませり 人の子を手に |
■サロメ ■兵士 2 |
9-7:サロメ耳を澄ます 傍らに第2の兵士 仰角で背景に月と雲 |
サロメ「誰が叫んでるの?」 第2「予言者です、王女様。」 サロメ「王が恐れてる、あの?」 第2「それは存じませんが、あれは予言者ヨカナーンです。」 |
■サロメ ■兵士 2 ■若いシリア人 |
9-8:二人の背後から声を掛けるシリア人。 サロメは聴いていない様子で吹き抜け(水槽)へ |
シリア人 「敷物を持ってこさせましょうか? お召し物が汚れます。 王女様…夜の庭が気に入られたのですね。」 |
■サロメ ■兵士 1 ■兵士 2 |
9-9:吹き抜けを覗き込んでいるサロメと第2の兵士 カメラ下から見上げて 第1の兵士が顔を出す。 |
サロメ「母様の悪口を言ってるんじゃないの?」 第2「何やら我々には判らないのです。」 サロメ「…あれは母様の悪口よ。」 第1 「王女様、王様が宴の席に戻るようにと仰せられました。」 |
■サロメ ■兵士 1 ■兵士 2 ■若いシリア人 |
9-10:覗き込んでいるサロメを横から。背後にシリア人が立つ。 サロメ振り向いて蹴飛ばす。 |
サロメ「戻らない」 シリア人「恐れ入りますが、王女様…その御返事は良くない結果を招くのではないかと存じます。」 サロメ「予言者は年寄りなの?」 シリア人「王女様、戻られた方が…お連れしましょう。」 |
■サロメ ■兵士 1 ■兵士 2 |
9-11:吹き抜けを覗き込んでいるサロメと第1第2の兵士 カメラ下から見上げて |
サロメ「…年寄りなの?」第1「いえ、若者です。」 第2「確かなことはわかりませんが、彼こそがエリアだと言う者も居ります。」 サロメ「エリアって?」 第2「昔、この国に居た予言者でございます、王女様。」 |
■サロメ ■兵士 1 ■兵士 2 |
9-12:3人越しに暗い水槽の底の闇 ヨカナーン唄う |
♪パレスチナよ…歓ぶな お前を打つ鞭は折れたが 蛇の種から踊り出る バジリスクこそ怖ろしい 青い鳥を呑み尽くす 青い鳥を呑み尽くす |
■サロメ ___________ ■ヨカナーン |
9-13:サロメの顔のクローズアップに重ねて、底にいて上を見上げているヨカナーンの姿ゆっくりとズームアップ | サロメ「何て不思議な声!あれと話してみたい。」 第2「王女様…恐らく無理ではないかと…。王はあの男と話すことをお許しになられません。大司祭にさえ禁じておられます。」サロメ「あれと話したい。」第1「不可能です、王女様。」サロメ「あれと話します。」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 |
9ー14:吹き抜けを覗き込んでいるサロメ。両脇に2人の兵士 腹を押さえてうずくまるシリア人を介抱している召使い 上方から | サロメ「…予言者を連れて来て。」第1「それは出来ません王女様。」サロメ「底は真っ暗…こんな暗い中にいるのはきっと怖ろしい…墓場の様…聞いてなかった?予言者を連れて来て。見たいの」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 2 |
9-15:サロメ目線カメラで第2の兵士の顔、目線とフォーカスが動いて、うずくまっているシリア人に |
第2「王女様、お願いです。そのような事を我々にお申し付けにならないで下さい。」 サロメ「私を焦らして楽しんでるのね。」 第1「王女様、我々の命は貴女の物…けれどそのお頼みに応えることは…他の…誰かに…」サロメ「あぁ…」 |
■サロメ ■若いシリア人 |
9-16:召使い目線カメラで シリア人の顔越しにゆっくりと近づいてくるサロメの姿 |
召使い 「ああ!何が起きようとしてるの? きっと惨い事が起きる…」 |
■サロメ ■若いシリア人 |
9-17:サロメの顔がシリア人の顔に接近してくる。 サロメとシリア人の二重唱 |
サロメ♪お前ならやってくれるナラボス(お前なら)/私はお前に優しかったもの/あれを見るがいい…ナラボス(見て御覧)/不思議な予言者、噂ばかりが膨らむ/王さえ恐れる…お前もそうなの、ナラボス? |
■サロメ ■若いシリア人 |
サロメとシリア人の踊り |
シリア人♪私は恐れません、王女様/例え誰でも恐れません/けれど恩のある陛下が禁じた予言者/ 【同時↓】 シリア♪私には出来ません…出来ないのです サロメ♪お前はやってくれるナラボス |
■サロメ ■若いシリア人 |
サロメバストサイズ とまどうシリア人 |
♪明日、輿に乗り、行くときに/イコン売りの店の前で/お前のため落としてあげよう/…小さな緑の花を ♪私の為なら…ナラボス/お前はきっとやってくれるもの/あの橋のたもとで…ナラボス/モスリンのベールを少し上げて/お前を見つめて…微笑んであげるかも… |
■サロメ ■若いシリア人 |
サロメシリア人の顔を両手で包む |
♪私を見て御覧、ナラボス/眼をそらさないでナラボス/お前は必ず私の望みをかなえるの/私にはよく判っている、お前は裏切らないと ナラボス …ねえナラボス |
■サロメ ■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 |
9-18:シリア人二人の兵士に合図して縄ばしごを下ろす。 サロメ覗き込んでいる。 |
シリア人「予言者をここへ…サロメ様の思し召しだ。」 サロメ「あぁ!」 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い |
9-19:シリア人と召使い 瞳に月を映した二人の顔がオーバーラップ 両側から交差して離れる。同時に喋っている。 |
召使い「おぉ…何て奇怪な月の姿…自らを葬るための経帷子を探し歩く死んだ女の手の様…」 シリア人「月の不思議な横顔…小さな王女様みたいだ… アンバーの瞳で、モスリンの雲越しに微笑んでいる小さな王女様みたいだ。 |
■サロメ ■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヨカナーン |
9-20:予言者が、貯水槽から出てくる。サロメは彼を見て、ゆっくりと後ずさる。 |
ヨカナーン「どこにいる?憎悪の杯を満たした男… 銀のローブをまとい、群衆の前で死ぬ運命の男は? 来るが良い、聞かせてやろう…砂漠に、宮殿に響く お前の悲鳴を!」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヨカナーン |
9-21:予言者越しにサロメとシリア人。 |
サロメ「あれは誰のこと…?」 シリア人「誰も答えられません、王女様。」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヨカナーン |
9-22:サロメとシリア人越しに予言者。 |
ヨカナーン「壁に描かれた男の姿を見つめていた女はどこに居るのだ?色とりどりに描かれたカルディア人に欲情し、使いを送った女は? 」 サロメ「母のことだ…」 シリア人「いえ違います、王女様。」 |
■サロメ ■ヘロディアス |
10-1:サロメの顔アップに重ねて 宴の席でワインを飲み干すヘロディアス…自らの胸を掴む。 |
サロメ「あれは母のこと。」 ヨカナーン「何処にいる?頭に冠を腰にデカマラをそびえさせたアッシリアの隊長に身体を開いた女…金の盾、銀の兜、リンネルに宝石を散りばめ、強靱な肉体を持ったエジプトの若者に身を任せた女は。 |
(ベッド・ロケ) ■ヘロディアス ■手×4人分 ____________■ヨカナーン |
10-2:ヘロディアスの色事のイメージ…幾人もの手がその身体に伸び、愛撫する。 …ヘロデに抱かれ…オーバーラップ・ヨカナーンの顔 |
行ってその近親相姦のしとねから女を叩き起こせ。主に道を用意する者の言葉を聴き、悔い改めるが良い。さもなくば憎悪のままに打ち据えられるだろう。起こせ!主の手には既に鋼の扇が握られているぞ… |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヨカナーン |
11-1:ヨカナーンを見つめるサロメを正面から、後にいるシリア人が思い切って肩に手を置いたのを振り払う。 | サロメ「あぁ!けれど、怖ろしい…あれは怖ろしい…」 シリア人「ここに居てはなりません…行きましょう。」 |
■ヨカナーン ____________ (庭ロケ) ■ヨカナーン |
11-2:ヨカナーンの上半身 森の中に居るイメージと重なってまた戻る |
サロメ「何て怖ろしい眼をしているのだろう…タペストリーの焼け焦げた穴、ドラゴンが棲みついたエジプトの洞窟のよう…月影があてどなく彷徨う黒い湖水のよう…もう一度話すかしら?」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヨカナーン |
12-1:上からのアングルで |
シリア人「お願いです…ここに居てはなりません、王女様。」 サロメ「哀れな…痩せた象牙細工の…銀細工の人形みたい…お月様みたいに汚れがない…あれの肌はきっと凄く冷たい…象牙のように…もっと近くで見たい!」 |
■サロメ ■若いシリア人 |
シリア人を足蹴にする |
シリア人「いけません、王女様!」 サロメ「近くで見なければ…」 シリア人「王女様!王女様!」 |
■サロメ ■ヨカナーン |
12-2:ヨカナーン、サロメから視線を外しそっぽを向く。 ヨカナーン、サロメを払う |
ヨカナーン「誰だ?私を見つめるのは…見られてはならぬ、黄金(こがね)の瞼の下の黄金(おうごん)の瞳… 誰かは知らぬ、知りたいとも思わぬ。去るまで黙っていよう。」 サロメ「私はサロメ、ヘロディアスの娘、ユダヤの王女…」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヨカナーン |
シリア人、サロメを起こそうとして拒絶される |
ヨカナーン「下がれ!バビロンの娘!神の選んだ者に近寄るな…汝の母は不義の酒で大地を満たし、その罪深いよがり声は神の耳に届いている。」 サロメ「ヨカナーン、もう一度…お声は美しい音楽のよう。」 シリア人「王女様!王女様!王女様!」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヨカナーン |
サロメ、ヨカナーンににじり寄り足にすがりつく。 |
サロメ「話して!ヨカナーン、私はどうすれば…」 ヨカナーン「ソドムの娘よ、近寄るな!顔をベールで覆い、頭に灰を撒いて、砂漠へ行け!人の子を探せ!」 サロメ「人の子?それは誰?お前のように美しいの…ヨカナーン?」 シリア人「王女様、どうか、もう中へ!」 |
■ヨカナーン |
12-3:妖しい雰囲気の空を背景に見上げた角度でヨカナーンを撮る。 |
ヨカナーン「神は何故ここへ剣(つるぎ)を持った天使を遣わされたのだ?誰を捜しているのだ?奴が銀のローブを着て死ぬ日は未だ来ぬはず…」 |
■サロメ ■ヨカナーン |
13-1:サロメとヨカナーンの二重唱 |
サ♪ヨカナーン! ヨ♪誰だ? サ♪ヨカナーン!私は焦がれてる…お前の肌に… 未踏の原野に咲く百合の花のように白い… 山々に降り積もる雪のように…アラビアの王宮を飾るバラのように…、 |
■サロメ ■ヨカナーン |
木の葉の露に光る夜明けの輝き、海に映える月の秘めた乳房も…この世にそれ以上白い物はない…どうかその肌に触れさせておくれ… |
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■サロメ ■ヨカナーン |
ヨ♪下がれ!バビロンの娘!この世の罪悪は何もかも 女がもたらすもの 下がれ!バビロンの娘! 我に語るなこの耳に 聞こえるのは神の言葉だけ… |
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■サロメ ■ヨカナーン |
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サ♪お前の肌は気味悪い…そら恐ろしい病のよう 毒蛇がうねる漆喰の壁…サソリが巣くう白い壁 忌まわしいフェイク…気味が悪い お前の肌は気味悪い 私が夢中なのは、ヨカナーン、お前の髪… エドムのブドウの樹から下がる黒ブドウの房のよう |
■サロメ ■ヨカナーン |
山賊や獅子が姿を隠すレバノン杉の日陰のよう 長く暗い夜の闇、月が隠れ、星が逃げまどう そんな夜でさえ比べられぬ お前の髪ほど黒くは無い この世にお前の髪ほど 黒い物はない… 触らせておくれ…私に 触れさせておくれ |
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■サロメ ■ヨカナーン |
ヨ♪ソドムの娘下がれ!我が身に触れるな!神の寺院をその手で汚すな! サ♪お前の髪は恐ろしい。ほこりを被った泥沼 頭を刺すイバラの冠 首に巻きつくウミヘビ わたしの愛しているのはそんな髪じゃない… |
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■サロメ ■ヨカナーン |
欲しいのはお前の唇…ヨカナーン…ヨカナーン タイヤの庭に咲く薔薇よりも赤い唇 葡萄を踏む足より赤い 寺院の鳩の足より赤い ライオンを殺めて森から出てきた 狩人の足より赤い |
■サロメ ■ヨカナーン |
黄昏に染まる海で漁師が もいだサンゴの枝のよう! モアブの山のヴァーミリオン ペルシャ王の弓よりも お前の唇より赤い物は この世にはない お前の唇にキスをするよ ヨ♪ならぬ!バビロンの娘!ソロモンの娘よ!断じて! |
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■サロメ ■若いシリア人 ■ヨカナーン |
シリア人が割って入り 止めようとする。 |
サ♪私はキスをするよ、ヨカナーン…お前の口に 音楽・プレイバックpartUのように(?)中断して |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヨカナーン |
13-2:シリア人は歌でなくセリフ |
シリア人「王女様!ミルラの庭のように端正で、鳩の中の鳩であらせられる王女様!もう、この男と話すのはおやめ下さい!そんな言葉をかけないで下さい!(泣く) 耐えられません!…王女様…そんなことを… |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■ヨカナーン |
サロメ意に介さず、見えないモノのように扱う シリア人自ら命を絶ってサロメとヨカナーンの間に倒れる 駆け寄る召使い |
サ♪ヨカナーン、お前とキスしたい… シリア人「ああぁ!」 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い |
13-3:シリア人を見つめ唄う召使い |
召使い♪…このシリアの若者は…未だ年若い隊長は… 私の愛しい友は 命を 絶ちました… 私が香水の箱と銀のイヤリングを プレゼントした青年は死んでしまいました… ああ何か不吉なことが 起きると彼は言っていた |
(庭ロケ) ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使 |
14-1:林の中でシリア人の背中から抱きしめている召使い…掴んだ手が離れてゆく 歌の場面一旦終了。 |
私もそう思ってたのに…どうしてこんなことに あの月は死すべき者を そう確かに探していた けれど彼とは思わなかった 月から隠しておけば 彼をどこかの洞穴にでも 入れておいたなら 月に見つかり こんな事に ならずに 済んだのに |
■サロメ ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヨカナーン |
15-1:風船カメラで撮った鳥瞰図 翼の生えた黒い影が横切る。 |
第1「王女様、若い隊長が自殺いたしました。」 サロメ「お前の口にキスさせて、ヨカナーン」 ヨカナーン「ヘロディアスの娘、怖ろしくないのか? 死の天使の羽ばたきが聞こえると私は予言しなかったか…実際に死の天使がやって来たとは思わぬか?」 |
■サロメ ■ヨカナーン |
16-1:ヨカナーンの正面、サロメ横顔で至近距離へ |
サロメ「キスを、させて…」 ヨカナーン「姦淫の娘よ、 |
(どこかの池ロケ) |
17-1:水底のボート或いは水面を行く無人のボート 水がボートの底に溢れだして沈む。 |
ただ1人、お前を救う事が出来る方がいらっしゃる。 救い主だ。行ってその方を探せ。ガリラヤの湖に浮かぶボートで弟子に説教をなさっている。岸辺に膝を折り、お名前を呼べば来て下さる。 足下にひれ伏して罪の赦しを乞うがよい。 |
■サロメ ____________■ヨカナーン |
18-1:女の濡れた唇アップ。 サロメ横顔で至近距離-から ヨカナーン、水槽に縄ばしごを下ろす。 |
サロメ「唇を…キスをさせて…」ヨカナーン「呪われている!近親相姦の母の娘、お前は呪われているぞ!」 サロメ「キスをするよ、ヨカナーン」ヨカナーン「もう観まい…呪われている、サロメ、呪われたのだ…」サロメ「お前の口にキスをするよ、ヨカナーン、キスを…」 |
■サロメ ■ヨカナーン |
19-1:水槽を見下ろしているサロメの顔の(見上げた)アップから遠景まで引く。 |
サロメ「ヨカナーン!」 水槽に声が響く。 |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 |
20-1:第1と第2の兵士二人が死体を始末しようと手足を持つと、召使いがすがって唄う。 |
第1「死体を始末せねば。王を煩わさぬように…」 召使い♪兄妹のように過ごして来たけど 私にとっては違うの 香水をあげた 箱いっぱい 多すぎると 笑ってくれた |
(庭ロケ) ■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使 |
21-1:水面からの反射が召使いとシリア人の顔に反射している。シリア人軽く唇を合わせてから水面(カメラ)を覗き込む | 瑪瑙の腕輪はいつも 手首に嵌めていてくれた それを観た私がどんなに 嬉しかったかも知らずに 夕暮れ川の畔の散歩 アーモンドの木陰で 彼が話す故郷の国 フルートくらいの低い声 いつも川面に影を映して眺めるのが好きだったよね |
■若いシリア人 ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 ■兵士 2 |
22-1:しゃがんだ第2の背後からのアングル。泣き崩れる召使いを第1がなだめて画面奥へ連れて行く。 |
私が止めてと思った訳が 今わかったの 第2「死体を隠そう…王には見せられない。」 第1「まあ、こっちへは来ないだろう…王は予言者を怖がってるから。」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヘロディアスの召使い ■ヘロディアス ■ヘロデ ■チグリヌス |
23-1: 隠す間もなくヘロデ、ヘロディアスたちが入って来る。慌てて立ち上がる兵士達。 |
ヘロデ「サロメは?王女はどこだ?何故、戻らぬ…おお!そこか。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
23-2:ヘロディアス不満そうに袖を引く。 引かれた拍子に夜空を仰ぎ見たヘロデ月に気付く。 |
ヘロディアス「あの娘を観てはなりません!いつも観てばかり!」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ ____________ ■サロメ 24-1b |
24-1:ヘロデ歌い出す。その瞳にズームインすると月と裸のサロメがオーバーラップして見える。ズームアウト。妻に問いかける。 | ヘロデ♪今宵の月の不思議な姿よ…そう見えぬか? 恋しい男を探してうろつく 真っ裸の狂女だ… 雲たちが衣を掛けると 女は振り払い 裸身を中空に曝して 雲間をよろめきすり抜ける… 「まるで恋人を捜している狂女だ…そう見えぬか?」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
24-2:ヘロディアスの冷たい顔。 その瞳に映るヘロデの顔へズームイン |
ヘロディアス「いいえ。月はまるで…月の様に見えます。さあ中へ。用はありません。」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヘロディアスの召使い ■ヘロディアス ■ヘロデ ■チグリヌス |
24-3:近景に水槽を覗き込むサロメ、ピントは其れ越しにヘロデ、ヘロディアスたち |
ヘロデ「…わしはここへ居る。マナッセ、絨毯を敷け。月が明るいな…象牙とジャスパーのテーブルを持て。 ここは空気が良いな。客人とワインを飲もう。シーザーの代理人を持てなすのだ。」 ヘロディアス「そんな理由じゃないくせに…」 |
■サロメ ■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヘロディアスの召使い ■ヘロディアス ■ヘロデ ■チグリヌス |
24-4:バストサイズで、ヘロデたちがサロメの方へ進もうとしている。 ヘロデ滑り、指に血を付けて舐める。 |
ヘロデ「風が気持ち良い…来なさい、ヘロディアス、客人たちがお待ち…おっと!滑った…血だ!なっ何だ、気味が悪い!何でこんなところに血が!…し、死体もあるではないか! ここにどうして死体があるのだ? お前らは、 |
■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヘロデ |
24-5:カメラ地べたから、死体越しにヘロデたちを見上げる。 |
わしがエジプト王の様に客に飯も喰わさずに死んだ先祖のミイラを自慢する男だと思っているのか!」 第1「陛下、それは隊長です。陛下が3日前に親衛隊の隊長に任命された若いシリア人です。」 ヘロデ「殺せと命じた覚えはないぞ。」 |
■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヘロデ |
第2「自ら命を絶ったのです、陛下。」 ヘロデ「何故だ?親衛隊の隊長にまでしてやったのに!」 第2「陛下、理由は判りませんが、自ら命を絶ちました。」 |
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■ヘロデ |
ヘロデ「合点がいかぬ…だが、ローマの哲学者は自殺するとも聴いた…チグリヌス、本当か?ローマの哲学者は自殺するのか?」 |
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■ヘロデ ■チグリヌス |
25-5:ローマ人とヘロデの2ショット |
チグリヌス「中には居ります、陛下。ストア派という野蛮な…全く馬鹿げた奴らですが。」 ヘロデ「わしも馬鹿げた事だとは思う。」 チグリヌス「ローマ中の笑い者!皇帝も奴らを風刺する狂歌を書かれ、市内に貼り出されました。」 |
■ヘロデ ■チグリヌス |
ヘロデ「ほぉ!奴らを風刺する狂歌を?皇帝は万能だな…しかし、このシリア人が自殺したとは …美しい男だったのに…残念だ。物憂い眼をしていた…そうだ、奴はサロメを物憂い眼で観て居った…きっと、奴はサロメを見つめすぎたのだ。」 | |
■ヘロディアス ■ヘロデ ■チグリヌス |
25-6:ヘロディアス、カメラ目線向こうにヘロデとローマ人 |
ヘロディアス「そんな人、他にも知ってる。」 |
■若いシリア人 |
26-1:死体をゆっくりとパン。 |
ヘロデ「これの父は王だった。わしはそいつをそいつの王国から叩きだした。これの母は女王だったが…ヘロディアス、お前が奴隷にした。だからこそ、これを隊長にしてやったのだが…死んでしまうとは残念だ… おぉ、何故お前達は死体を放り出しているのだ? |
■若いシリア人 ■兵士 1 ■兵士 2 ■ヘロディアス ■ヘロデ |
(死体は運び出される) |
どこかへ持って行け!観たくない…運び出すのだ。 ここは冷える。風が吹いて居るぞ。風が吹いておろう?」 ヘロディアス「いいえ、風など吹いてはおりません。」 |
■ヘロデ |
27-1:空をバックに見上げるヘロデの顔 |
ヘロデ「わしは風が吹いていると言っているのだ…風に乗って羽ばたきの音が聞こえる…巨大な羽根の音だ…聞こえぬか?」 ヘロディアス「何にも(笑)」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
27-2:カメラ、ヘロデとヘロディアスの廻りを廻る |
ヘロデ「聞こえなくなった…だが、確かに聞こえた、風に吹かれて行ってしまったか…いや、また聞こえた!聞こえぬのか?ほら、あの羽ばたく音だ!」 ヘロディアス「何も聞こえませぬ。あなたがオカシイのです。さあ中へ戻りましょう。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
27-3:ヘロデ聞こえなくなった様子で首を振る。 ヘロディアスが額に当てた手を振り払い |
ヘロデ「わしはまともだ。お前の娘こそ死の病に罹っている。あんなに蒼ざめたのは初めてだ。」 ヘロディアス「あれを観るなと申しております。」 |
■サロメ |
27-4:テーブルにワインが運ばれる ワインの向こうにサロメが見える |
ヘロデ「ワインを注げ。…サロメ、ここへ来て飲みなさい。シーザー自ら送ってくれた逸品だ。その小さな赤い唇をひたしておくれ…私が残りを飲み干そう。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
27-5:にやけたヘロデを正面から |
サロメ「喉は乾いておりません、陛下。」 ヘロデ「何と答えたか聴いたであろう、お前の娘が。」 ヘロディアス「正しいふるまいです。なぜいつもあれを見つめるのですか?」 |
■サロメ |
27-6:テーブルの向こうのサロメ。(フルーツが運ばれテーブルに置かれる) |
ヘロデ「フルーツを。 サロメ、ここへ来てフルーツを食べなさい。わしは果実に残ったお前の歯形を見るのが大好きだ。これをちょっと噛じりなさい。残りは私が食べるから。 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
27-7:にやけたヘロデを正面から |
サロメ「お腹は空いておりません、陛下。」 ヘロデ「お前が娘をどうしつけたか見るが良い。」 ヘロディアス「私も娘も由緒正しき王家の血筋です。あなたのお父様みたいに… |
■ヘロデの父(ヘロデ) |
28-1:ラクダをバックに砂漠に立つヘロデの父(静止画) |
あなたのお父様はラクダ曳きで、由緒正しい追い剥ぎの家系…!」 ヘロデ「この嘘つきめ!」 ヘロディアス「何が真実か、あなたが一番御存知のはず。」 |
■サロメ |
29-1:また水槽を覗き込むサロメ |
ヘロデ「サロメ、来て隣に座りなさい。お前に母親の玉座をやろう。」 サロメ「疲れてはおりません、陛下。」 ヘロディアス「あれの礼儀正しいこと(笑)」 |
■サロメ |
30-1:水槽を覗き込むサロメを吹き抜けの底から 響くヨカナーンの声 |
ヨカナーンの声「時は来た!予言は成就する…その日は近い。」 |
■サロメ |
30-2:サロメの顔、下からアップで。 |
ヘロディアス「黙らせて下さい。あの声は聴きとうない。いつも私を目の敵にして嘲るのです。」 ヘロデ「お前のことは言ってなかったぞ。あれは偉大な予言者だ。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
31-1:ヘロデに詰め寄るヘロディアス |
ヘロディアス「予言者など信じませぬ。誰が未来を語れましょう?誰も知りませぬ。あやつは私を侮辱しています。でも…あなたは恐れてる。あなたは、あの男を怖がっているのです。」 ヘロデ「奴を恐れてなどおらぬ。誰も恐れるものか。」 |
■サロメ |
32-1:サロメの顔、下から ゆっくりとズームアップしてゆく |
ヨカナーンの声「おお!惨き者よ!娼婦よ!…黄金の瞳と煌めく瞼を持つバビロンの娘よ!神はこう言われた…群衆を向かわせ石礫で逝かせよ…と。」 ヘロディアスの声「あれを黙らせて!」 |
|
ヨカナーンの声「主の剣でその女を刺し貫き、盾の下に押し潰さしめよ! と。」ヘロディアスの声「まあ、外聞の悪いことを!」ヨカナーンの声「これは神が地上から全ての邪悪なる物を一掃せんがためなり。世の女がこの憎むべき行いを真似せぬように…と。」 | |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
33-1:ヘロデに詰め寄るヘロディアス |
ヘロディアス「誰のことか聞こえてる?誰があなたの妻なのか思い知らせてやって!」ヘロデ「あれはお前の名前は出しておらん。」ヘロディアス 「それがどうしたの!あれが罵り続けているのが誰か知ってるでしょ! 私はあなたの妻よ!違うの!」 |
■ヘロデの父(ヘロデ) ■ナーマン (ピロティ) |
オーバーラップする 先王を絞殺するナーマン |
ヘロデ「正真正銘の妻だとも…美しく気高いヘロディアス…そして…兄の妻でもあったのだ。」 ヘロディアス「彼の腕から私を奪ったくせに。」 |
■ヘロデ |
33-2:オーバラップしてヘロデの顔。 グラスに注がれるワイン |
ヘロデ「…そのことについては話さぬ…話したくない。預言者が罵るのもそれがため…。偶然が巻き起こした不幸だ。…いや、こんなことを話している時ではない。 気高いヘロディアス、我々はゲストを忘れておる。最愛の人よ、杯を満たしておくれ。 |
■ヘロデ ■腕×5 グラス計6 |
33-3:ヘロデを地面から 差し出されるワインを持った腕。 |
ホー…!ワインを満たした銀の杯、ガラスの杯がある。この杯をシーザーに。ローマの方たちもいらっしゃる。シーザーに乾杯。」 全員「シーザー!シーザー!」 |
■サロメ |
34-1:サロメの顔 |
ヘロデ「お前の娘を見たか、あんなに蒼ざめている…」 ヘロディアス 「青ざめようが赤ざめようがあなたに関係ないでしょ?」ヘロデ「あんなに蒼いのは見たことがない。」ヘロディアス「あ・れ・を・見ない・でったら!」 |
■サロメ ■ヨカナーン |
34-2:上方からサロメの頭越しに地下のヨカナーンを 赤い月や滴る星々が暗闇をよぎる。 |
ヨカナーン♪その日 太陽は髪の毛のように黒く 月は滴る血のように紅く 星々はイチジクの実の様に 地上に降り注ぐ 王達は畏れおののく… |
■ヘロディアス |
35-1:滴る星々の合成繋ぎでヘロディアスのグラスの中のワイン、それをぐいっと飲み干して |
ヘロディアス「あぁ!あぁ!そんな日が来るなら見てみたいもんだわ!月が血のように紅くなり、星はイチジクの実のように地上に落ちる…まるで酔っぱらいの戯言!あの声が我慢できない!聞くのも嫌!黙らせて! |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
35-2:ヘロデとヘロディアス並んでいる |
ヘロデ「いいや…何を言っているのかは理解できぬが、あれはなにかの前兆かもしれん。 ヘロディアス「ただの酔っぱらいの戯言よ!」 ヘロデ「あれが酔うたのは神のワインかも知れぬ…」 |
■ヘロディアス |
35-3:ヘロディアスを斜め下から。 |
ヘロディアス「何のワインだって!神のワイン?どこの畑で取れて、どこのワイン入門に載ってるの!いいかげんなこと言うんじゃないわよ!」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
35-4:-2と同じアングル。ヘロデがずっとサロメを見ていたのに気付いて |
ヘロディアス「また見てる…見ないで!見るなと言ってるでしょ!」 ヘロデ「お前はそれしか言わぬ…」 ヘロディアス「もういっぺん言わせたいの!」 |
ヘロデ「ところで、ユダヤの奴らが騒いでた寺院修復の件だが…何かしてやるのか?聖域の覆い布(ベール)が無くなったとか…そうじゃなかったか?」 ヘロディアス「あれはあの者達の自作自演です!話を逸らさないで。もうこんな処にいたくない。さあ中へ!」 |
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■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
35-5:焦点の合っていないサロメ越しにテーブルのヘロデとヘロディアス サロメの身体が二人に向き直るようにうねる |
ヘロデ「そうだ…わしのために舞ってくれ、サロメ。」 ヘロディアス「踊らせませぬ。」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ |
35-6:二人越しのサロメ |
サロメ「陛下、踊りたくありません。」 ヘロデ「サロメ、ヘロディアスの娘よ、わしのために踊れ。 ヘロディアス「やめて。あれを放っておいて。」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
35-7:-5と同じアングル サロメ二人に背を向ける (カメラの側へ身体を向ける) |
ヘロデ「わしが踊れと命じているのだ。サロメ。」 サロメ「踊りません、陛下。」 ヘロディアス「(笑いながら)何と「従順」なこと!」 |
■ヘロデ |
ワインを飲み干す。 |
ヘロデ「…踊ろうが踊るまいがわしには関係ない。今宵、わしは幸せだ。幸せすぎる位だ。こんなに幸せだった事は今だかってなかった。」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
35-8:第1、第2越しにテーブル |
第1「陛下は憂鬱そうだ…そう見えないか? 第2「ああ、憂鬱そうだ」 |
■サロメ ■ヨカナーン |
36-1:ヨカナーンを斜め後、ローアングルで見上げる。 上方にサロメがいて覗き込む |
ヨカナーン♪ その者は王座に座る 赤と紫の服をまとい 黄金の杯を冒涜で満たし 王座に座るだろう その時 雲は裂け 天下る天使は その者を打ち倒し ミミズの餌にするだろう |
■ヘロディアス ■ヘロデ ■サロメ |
37-1:ヘロディアスとヘロデを背中側から |
ヘロディアス「ほら聞いた?あなたがミミズの餌になるって言ってるわよ。」 ヘロデ「それはわしの事ではない。あれはわしに逆らった事はないのだ。おおかたカッパドキアの国王の話だろう…わしの敵だからな。 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
37-2:ヘロデ越しにヘロディアス 気色ばむ |
ミミズに喰われるのは奴だ。わしのことではない。 ただ、妻の事…兄の妻を娶ったのは罪だと…それは正しいのかも知れぬ。事実、お前は石女(うまずめ)、わしの子を孕まぬのだからな。」 ヘロディアス「石女?あたしが?あんたがそれを言う? |
■ヘロディアス |
37-3:ヘロデ視点でヘロディアス |
いつも私の娘ばっかり眺めているあんたが!娘が踊るのをやらしい眼でみてる人が!はっ!馬鹿か?あたしはサロメ産みました!あんたは子供いないじゃない。あんたが抱いた奴隷で子供産んだのいた?わかる?あんたが『種なし』なの!あたしじゃなくて!」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
37-4:横から二人を |
ヘロデ「静まれ!お前が石女なのだ。お前はわしの子を産めない、それはこの結婚が本当の結婚ではなく、悪魔がもたらした近親相姦だからだと…本当かも知れぬ、わしは怖い。そう思えることが…だが、今はそんなことを話す時ではない。今宵わしは楽しい気持ちだったのだ。 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
ヘロデがっくりする。 |
事実、楽しい。満ち足りているのだ。」 ヘロディアス「もう結構…今夜は随分あなたに笑わせてもらったわ…でも、もう遅い。中へ入りましょう。夜明けには狩りに出るのだから。シーザーのお使いの方たちにいいとこ見せてあげるんでしょ?違うの?。」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
38-1:二人の兵士越しにテーブル |
第2「王は憂鬱そうだ。」 第1「ああ、そうだな。」 |
■サロメ ■ヘロデ |
39-1:ヘロデ、テーブルから水槽のへりにしゃがんでいるサロメに唄う |
ヘロデ♪ サロメ サロメ 踊っておくれ わたしのために お願いだから 今宵 わしは 哀しいのだ 心が闇に 落ち込んで ここへ来るなり血糊ですべった こんなに 不吉な ことはない 空から聞こえてきたものは 巨大な翼の 羽ばたく音で |
■サロメ ■ヘロデ |
何の意味かは判らないが どうにも心が落ち着かぬ だからサロメよ 踊っておくれ お願いだから わしのため もしも踊ってくれるなら お前の願い叶えよう 欲しい物なら何でもな お前が望む物ならば 国土の半分だとしても | |
■サロメ |
39-2:サロメ立ち上がる |
サロメ「私が望むものなら何でも下さいますか、陛下?」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ |
39-3:サロメ越しに二人 |
ヘロディアス「踊ってはなりません。」 ヘロデ「望むものなら何でも、国土の半分でも…だ。」サロメ「誓うのね?」 ヘロデ「誓うとも、サロメ。」 ヘロディアス「踊ってはなりません! 」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ |
39-4:やや遠景で三人 サロメゆっくりと近づき |
サロメ「何に誓うの?陛下。」 |
■サロメ ■ヘロデ |
39-2:ヘロデ唄う 跪いてサロメに手を差し伸べる |
ヘロデ♪ わが命 王冠 神に誓う 何であろうと 望みの物を わが王国の半分でも 踊ってさえくれるなら おぉ…サロメ おぉサロメ わしのために 踊っておくれ… |
■サロメ ■ヘロデ |
39-3:ヘロデ越しにサロメ ヘロデの両手を取る 手にくちづけようとするのをすっと抜き |
サロメ「陛下は誓われました。」 ヘロデ「誓った。」 |
■サロメ ■ヘロディアス |
39-4:立ち上がるヘロディアス越しにサロメ。一瞬ヘロディアスを見て顔を戻す |
ヘロディアス サロメ!踊る気なの! |
■ヘロデ |
39-5:サロメ目線でヘロデ |
ヘロデ「王国の半分、それが女王にふさわしい…サロメ、もし王国の半分を望むなら…お前は女王としてふさわしい…あぁ!ここは寒いな。氷のような風が吹いているぞ。 また…羽ばたきが聞こえる。テラスの上空で巨大な黒い鳥が羽ばたいているような… |
■ヘロデ |
39-6:ヘロデから上空 |
だが、何故見えない…なんて凄まじい羽根の音だ…羽根が凄まじい寒風を吹き付けているのだ…おや…冷たいというより熱くなった…喉が詰まる、水をかけろ!雪を喰いたい…マントを緩めろ、早く!早く!… いや、脱がせてくれ…頭の花輪が焼けるようだ… |
■ヘロデ |
39-7:ヘロデアップ 髪飾りを外してテーブルに投げる |
薔薇が燃えている!額が焦げる!…おぉ!これで息が出来る。何て紅い花びらだ!布についた血の染みのようだ。いや…全てが何かのシンボルに見えるのはマズイぞ…人生が恐怖で一杯になる。『布についた赤い血の染みは綺麗な薔薇の花びらのようだ』うん、この方が良い。 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ |
…いやいや、こんな事を言いたいんじゃない…今、わしは幸せなのだ。幸せに過ごしているのだ。それともわしには幸せになる権利がないのか?お前の娘はわしのために踊ってくれる…踊ってくれぬのか?サロメ? 約束してくれたよなぁ? |
|
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ |
39-8:ヘロデ越しにサロメとヘロディアス |
ヘロディアス「娘は踊りません。」 サロメ「踊ります、陛下。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
39-9:ヘロデ、ヘロディアスに |
ヘロデ「聞こえたろう。わしのために踊るのだ。良く承知してくれたサロメ。踊り終えたら望みの物をねだるのを忘れるな。何でも欲しい物を…女王にふさわしい王国の半分でも…と、わしは誓った。そうであろう?」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
40-1:全景、ローアングルから空を取り込んで |
サロメ「誓われました、陛下。」 ヘロデ「わしは言葉に背かぬ。誓いを破ったことがない。嘘の付き方を知らないのだ。わしは我が言葉の奴隷…わしの言葉は王の言葉だ。カッパドキアの王は嘘で固めた舌を持っておる。 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
あれは真の王ではない、臆病者だし、借りた金も返さない。わしの大使を侮辱し、小汚い言葉を使う…だが、奴はローマでシーザーに吊されるだろう。吊されなくても死んで、ミミズに喰われるだろう…予言者はそれを予告しているのだ。…何をのんびりしてる、サロメ?」 | |
■サロメ ■奴隷1 ■奴隷2 |
40-2:サロメ全身ローアングル 奴隷が香水と七枚のベールを持って来て、サンダルを脱がせる |
サロメ「奴隷が香水と七枚のベールを持って来て、私のサンダルを脱がせてくれるのを待っております。」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■奴隷1 ■奴隷2 |
40-3:ぼんやりと着替えているサロメの一部が手前に ヘロデたちへカメラ寄る |
ヘロデ「裸足で踊るのか!それは良い。小さな足は白い鳩のようだろうな、樹の処で踊ればきっと白い小さな花のように…いやいやいや!いかん!あれは血の上で踊ろうとしている!血だまりが出来て居る…血の上で踊ってはならぬ!縁起が悪い! 」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
40-4:ヘロディアス扇でヘロデの股間を押さえる。ヘロデ払って |
ヘロディアス「あれが血の上で踊るくらいどうだというの?もっと罪深いことを考えてる癖に…」 |
■サロメ ■ヘロデ |
41-1:ヘロデに抱かれるサロメ 一瞬フラッシュ |
ヘロデ「わしが何を?… |
■ヘロデ |
42-1:真っ赤な月 ヘロデの恐怖に満ちた顔へとオーバーラップ |
おぉ!月を見ろ!深紅に染まった!まるで血のような色だ…あぁ!予言が真実になろうとしておる…月が血の色に染まる…そう予言してなかったか?皆が聞いたはずだ。今や、月は血のように赤い、見えぬのかあれが?」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
43-1:月を見上げるヘロデの背後からのアングル ほとんどシルエット横からヘロディアスが |
ヘロディアス「ええ、ええ、よーく覚えてますとも…『そして星々はイチジクの実のように降る』だったわね? 『太陽は真っ黒になり地上の王達は畏れおののく』… 少なくともたったひとつだけは予言が的中したわ…『地上の王達は畏れおののく』。 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
さあ、中へ入りましょう。あなた、病気よ…ローマで『ついにイカレた』って噂されるわ。 さあもう入るの。わたしの言うことが聞けないの。」 |
|
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
43-2:ヘロディアスのアップから全景へとズームアウト |
ヨカナーン♪ エドムから来るのは何者だ。ボズラから来るのは何者だ 誰が衣を紫に美しく染め、全能の偉大なる者として歩いて来るのか 何故その衣が深紅に染まるのか |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
43-3:カメラ二人の背後を移動しながら |
ヘロディアス「入りましょう。あの声聞いてると頭が変になりそう。あんなのが叫び続けてるのに、しかもあんな衣裳で、あなたのギラギラした眼の前で…あの娘を踊らせはしません!」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
前に廻って |
ヘロデ「座ってろ、我妻、我が王妃。大した事じゃない…わしは踊を見るまで中には入らぬ。サロメ、踊ってくれ。」 ヘロディアス「サロメは踊りません。」 |
44-1:サロメの踊る背景となる屋上の固定映像 <44-2:ダンス映像用> |
サロメ「準備が出来ました…陛下。」 7枚のヴェールのダンス(LIVEパフォーマンス) <映像のみ公開版のために踊り映像を撮っておく> |
|
■サロメ ■奴隷1 ■奴隷2 |
44-3:更衣室衣装の奴隷が近づくをサロメ目線→ 44-4:OLで元衣装サロメが立ち上がる。 |
|
■ヘロデ |
45-1:ひときわ高い拍手。 ヘロデ王 |
ヘロデ「素晴らしい!素晴らしいぞサロメ!(ヘロディアスに)お前の娘がわしのために踊った踊りを見たろう。 おいでサロメ、こちらへ。褒美をとらさねば…わしの魂はお前の踊りを見て歓喜に打ち震えた…!その礼をせねばならぬ! |
■サロメ ■ヘロデ |
45-2:ヘロデ王越しに、控えるサロメ |
わしは今こそ、そなたの魂が欲っするものを『何でも』与えよう…何を待ち望んでいるのだ?申してみよ… サロメ「(跪いて)私が持ってきて欲しいものは…銀のお盆に載せた…」 ヘロデ「(ちょっと当てが外れた感じに笑って)銀の盆に |
■サロメ ■ヘロデ |
45-3:横から |
載せた…?発想がチャーミングだ。流石、ユダヤ一美しい娘の云うことは違うぞ…可愛らしいサロメや、お前が銀の盆に載せてもらいたい物とは何だ?云ってごらん。何でも大丈夫、私の物はお前の物…何が欲しい?」 |
■サロメ |
45-4:濡れた唇アップ |
サロメ「(顔を上げ)ヨカナーンの首。」 ヘロディアス「おぉ!良く言ったサロメ!」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ |
46-1:カメラ3人の間で廻る? |
ヘロデ「ならぬ!…なるものか!」ヘロディアス「良く言った!それでこそ我が娘…」ヘロデ「ならぬ…ならんぞサロメ。そんなことを望んではならぬ。母の言葉に耳を貸すな。いつだってお前に邪悪なことを吹き込むのだ…従ってはならぬ。」 |
■サロメ |
サロメで止まる。 |
サロメ「…私の考えです。私の歓びのために銀の盆に載せたヨカナーンの首を…あなたは誓いました、ヘロデ。王として。」ヘロデ「覚えている。神に誓った…よく覚えて居る。だがサロメ、頼むから、他の物を!王国の半分はどうだ?…けれど、それだけはやめてくれ。」 |
■サロメ |
サロメ「ヨカナーンの首を下さいませ。」 ヘロデ「ならぬ!それはやれぬ。」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 |
46-2:全景 |
サロメ「あなたは誓いました、ヘロデ。」 ヘロディアス「そう。あなたは誓い、皆が聞いています。皆の前で王が誓ったことです。」 ヘロデ「騒ぐな女!お前と話してはおらぬ。」 |
■ヘロディアス |
46-3:ヘロディアス全身 |
ヘロディアス「我が娘はよくぞヨカナーンの首を所望してくれたものです。あやつがどれほど私を中傷し、口に出せぬ様な言葉を浴びせて来たことか…どうか娘を裏切らぬよう…あなたは誓われた…神に誓ったのです。」 |
■ヘロデ ■サロメ |
46-4:ヘロデ全身 パンしてサロメへ |
ヘロデ「黙れ!何も言うでない!…サロメ、お前は頑固者ではない…わしはいつもお前には優しくしてきた…お前を愛してきた。…もしかすると愛しすぎたのかも知れぬが…頼むからそんな物は望むな。酷い物だぞ。わしに願うには怖ろしすぎる。そう、冗談であろう。 |
■ヘロデ ■サロメ |
パンしてヘロデへ |
切断された首を見たいなどとは普通思わぬ。…どんな喜びがあるというのだ?喜びなどあるはずがない。 …まあ聞け。わしはエメラルドを持っている。シーザーの配下が送ってくれた大きな丸いエメラルド…見たら眼が離せぬようなものだ。 |
■サロメ |
47-1:伏せているサロメの顔 |
シーザーはサーカスに持っていって見せ物にしたというが、わしのはそれより大きい。世界最大のエメラルドだ…それをやろう。どうだ?それなら望めばすぐにやる。」 サロメ「私が欲しいのは…ヨカナーンの首。」 |
■サロメ |
ヘロデ「聞きとうない、聞きとうないぞ…わしを苦しめるな、サロメ。」 サロメ「ヨカナーンの首!」 |
|
■ヘロデ |
48-1:ヘロデクローズアップ。 |
ヘロデ「駄目だ、それは駄目だ。わしを悩ませるな…お前を見つめすぎたからか?そのせいか?たしかに今夜はずっと見つめていたとも。お前が美しすぎるからだ。その美しさが哀しいくらいわしを悩ませるのだ。お前を見つめすぎていた。 |
■ヘロデ |
48-2:ヘロデ・バストアップ |
いや、もう二度とお前を見まい。もう何も目にすまい。人が目にするような物は何も。鏡だけが見せてくれよう、我々の仮面を…ワインを持て!喉が乾く。…サロメ、サロメ仲良くしてくれ。お前のことを思うと…何だ?わしは何を言いたかったのだ?あぁ、思い出した! |
■ヘロデ ■サロメ |
48-3:ヘロデとサロメ横から |
…サロメ、もっと傍においで。わしの話が聞こえるように。 |
■ヘロデ ■サロメ |
49-1:ヘロデ歌い出す 全身 正面 サロメの頭が画面の下部手前に |
♪おおサロメ 知ってるね わしの白孔雀たち 金色の嘴 足は紫に染まり 鳴き声は雨を知らせ 白く優美な尾羽根を広げ 月が照らせばまるで天国 「あれほど素敵な鳥たちはこの世にはいない、シーザーも持ってはおらぬ。あれをやろう、100羽全部。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
ヘロデ顔を覆う -間奏-ヘロディアス横から |
サロメ♪私にヨカナーンの首を!♪ ヘロディアス「我が娘ながらよく云った…孔雀なんぞと馬鹿らしいこと!」 ヘロデ「だまれ!猛獣の様に喚くな、叫ぶな…勘に触る。黙れと云っているのだ!」 |
■サロメ ■ヨカナーン |
50-1:サロメと水槽の底のヨカナーンをOL |
ヘロデ♪おおサロメ 考えよう お前は何をしたいのだ ヨカナーン 神が遣わした聖者 神の指が触れた男 悪口さえもきっと神が その口に詰め込んだもの (神は常に男と共に 神は常に男と共に) |
■サロメ ■ヨカナーン ■ヘロデ |
-間奏-51-1:セリフの間だけヘロデが挟まる 52-1:サロメの横顔 53-1:ヨカナーンの横顔 |
ヘロデ「実際、奴が死ぬ日には誰かに災いが降りかかると予言している。それは誰に?…わしではないのか?」 ヘロデ♪おおサロメ 思いだせば わしは来るなり血で滑った 中空に 羽ばたく音を聞いた それは前触れ不吉な予感 禍いの雨が降りかかる |
■サロメ ■ヘロデ |
54-1:サロメとヘロデ横から |
(神は常に男と共に 神は常に男と共に) ヘロデ「頼むサロメ、わしの云うことをもう一度聞いてくれ。」 サロメ♪私にヨカナーンの首を!♪ |
■ヨカナーン ■ヘロデ |
55-1:サロメ視線ヘロデの顔…がヨカナーンに変わって行く |
ヘロデ「あぁ!お前はわしの云うことを聞こうとせぬ!(溜息ひとつ)…聴いてくれ。実は…わしは素晴らしい宝石を隠している…お前の母親も知らぬ処にだ。」 *ヘロデの声は音量が落ちて、やっと聞こえる程度。 器楽曲が続いている。 |
■サロメ ■ヨカナーン(面だけ可) |
56-1:ヨカナーンの顔がサロメの髪にキスをする 56-2:ヨカナーンの顔がサロメの頬にキスをする |
四列に真珠を並べた首飾り…まるで月を銀の光で繋いだ如き美しさ、数十の月を黄金の網で絡め取った様だ。女王の象牙のように白い胸の上こそ本来の棲み家、これをつければ女王としてふさわしい美しさだ。 |
56-3:ヨカナーンの顔がサロメのうなじにキスをする 56-4:ヨカナーンの顔がサロメの首筋にキスをする |
アメジスト…赤ワインのように濃いのとロゼのように薄いのと。トパーズは三種類、虎の目のイエローと、山鳩の目のようなピンク、猫の目のグリーン…氷のように冷たい炎を燃え上がらせているオパールは影をも恐れるような哀しい男の心で出来ている。 | |
56-5:ヨカナーンの顔がサロメの瞼にキスをする 56-6:ヨカナーンの顔がサロメの耳にキスをする |
死んだ女の眼球ほどもあるオニキス、月の満ち欠けと共に変化してゆくムーンストーン、花のように青く卵くらい大きいサファイヤ…神秘を潜ませ、月が静かに映る海のような青だ。橄欖(かんらん)石、エメラルド、玉髄(ぎょくずい)、ルビー、赤縞瑪瑙 、ヒヤシンス石 | |
56-7:ヨカナーンの顔がサロメの肩にキスをする 56-8:ヨカナーンの顔がサロメの背中にキスをする |
…全部お前にやろう…まだあるぞ。インドの王が持っていたオウムの羽根で出来ている四枚羽根の扇、ヌミディアの王が送ってきたダチョウの羽の衣裳、女性には見せられぬ水晶細工も持っている、若い男が見るとアレが腹を叩くような代物だ。 | |
56-9:ヨカナーンの顔がサロメの足にキスをする 56-10:ヨカナーンの顔がサロメのふくらはぎにキスをする |
螺鈿の箱に入れてある三粒のトルコ石は、額に当てると幻が見え、それを持った手で触れば石女に実りをもたらす…これらは偉大な宝物、すべての上をゆく価値がある。しかし、これでも全部じゃない。 |
56-11:ヨカナーンの顔がサロメの太股にキスをする 56-12:ヨカナーンの顔がサロメの臍にキスをする |
黒檀の金庫に、純金のリンゴのような琥珀カップを二つ持っている。敵が毒を注ぐと銀色に変わる優れ物だ。琥珀で出来た金庫には、ガラスでこしらえたサンダルが入っている。 |
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56-13:ヨカナーンの顔がサロメの胸の谷間にキスをする |
セレル族の土地で作られたマント、ユーフラテスのほとりから来たヒスイとザクロ石で飾られたブレスレット… これでも足りぬのか、サロメ?欲しい物を云うが良い。それをとらせよう。お前が望む物なら何でも与えよう。たった一つの物以外ならな… (声の音量が戻ってゆく) |
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■ヘロデ ■ヨカナーン |
57-1:接近するヨカナーンの顔…が、突然遠ざかり、ヘロデの顔に変わる。 |
財産の全てを与えても良い…たった1人の男の命を救うためなら…司祭のマントでも聖域のベールでも、剥ぎ取ってお前に与えよう… |
■バリサイ人 ■サドカイ人 |
58-1:入り口の処にいるユダヤ人たち |
ユダヤ人たち激しいクシャミを繰り返す。 |
■サロメ |
59-1:顔を伏せ跪いているサロメ。ゆっくり顔を上げる。前方、斜め上方から。 |
サロメ「私にヨカナーンの首を!」 |
■ヘロデ |
60-1:ヘロデ椅子にへたりこんで |
ヘロデ「…望みのものをとらせろ!あの母にしてこの子ありだ。」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ ■兵士 1 ■兵士 2 ■ナーマン |
60-2:全景 上から 第1近づく。ヘロディアス王の指から死の指輪を外し、兵士それを処刑人に渡す。死刑執行人は怖がっている。 |
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■ヘロデ ■ナーマン ■兵士 1 ■兵士 2 |
60-3:ヘロデバストアップの横顔の向こうで死刑執行人が縄ばしごを下ろす。 |
ヘロデ「誰か私の指輪を取った?…右手に死の指輪がはまっていたはずだ。…誰が私のワインを飲んだ?わしのカップ空になっている!…ああ!きっと災難が降りかかるだろう。一体、何のためにわしは誓いをたてたのだ…」 |
■サロメ |
61-1:サロメが水槽の上から見ているのが遠ざかる。 |
ヘロデ「これからは、王として宣誓などすまい。 破れば怖ろしい事が起こり、守れば、それも怖ろしい…」 |
■サロメ ■ヘロディアス ■ヘロデ |
62-1:全景。ヘロディアスとヘロデの背後から、間にサロメが見えている。 |
ヘロディアス「娘は本当に…よくやりました。」 ヘロデ「…よくない事が起きるに違いない。」 |
■サロメ |
63-1:サロメ・アップ |
サロメ「音がしない。何も聞こえない…どうしてあの男は叫ばないのだろう?もし誰かが私を殺そうとしたら、私なら叫ぶ……殺して、殺して!ナーマン殺すの!云ったとおり殺して…駄目…何も聞こえてこない。静か。ひどく静かなまま…あ!何か…地面に落ちた! |
■サロメ ■ヘロディアスの召使い |
63-2:サロメを後方上空から ヘロディアスの召使いを見て合図する |
…何?処刑人が刀を落としたの?怖がってたもの、あの奴隷…刀を取り落としたのね。あの奴隷じゃ無理…兵士を行かせなきゃ…ここへおいで。お前は死んだ男の友達ね、違う?…未だ死人が足りない。行って兵士達に下りるように伝えて。私が頼んだ物を持ってくるようにと。 |
■サロメ ■ヘロディアスの召使い ■兵士 1 |
63-3 召使いは後ずさる、今度は兵士に向かって |
王が約束したのだもの…あれは私の物。兵士たち!こちらへ。水槽の底へ下りてあの男の首を持ってきて。 ヘロデ、あなたの兵隊たちにヨカナーンの首を持ってくるように命じて! |
(ブルーバック使用) ■ナーマン・皿・生首 ____________■サロメ |
64-1:巨大な黒い…死刑執行人の腕が、銀の盾の上に巨大なヨカナーンの首を載せて貯水槽から迫り上がる。 |
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■サロメ |
65-1:サロメは手を伸ばしサロメの顔に血が滴る。 65-2:それを受け取る。普通のサイズに戻っている |
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■ヘロディアス ■ヘロデ ■奴隷1 ■奴隷2 |
66-1:ヘロデは、マントで顔を隠し、ヘロディアスは笑顔で扇を使う。奴隷らは跪いて祈り始める。 |
↓以下のサロメのセリフはJモリソン/ドアーズ的伴奏 |
67-1:サロメ、バストショットで皿を持ってくるりと回る。血がしぶく(ブルーシート用意) |
サロメ「ヨカナーン、お前はキスを許してくれなかった。良いとも…今、私はキスをする…お前の口にキスをするよ、ヨカナーン…そう言ったでしょ、…あぁ、キスするよ… |
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■サロメ |
68-1:サロメ視点、皿の上に載ったヨカナーンの首。背景が回る |
私を見ないの、ヨカナーン?目があんなに怒りと軽蔑で燃えていたのに、今は閉じられている…何で閉じているの。目を開けて。瞼を持ち上げて、ヨカナーン!何で見ようとしないの?私が怖い、ヨカナーン?だから見ないの? |
■サロメ |
69-1:サロメ、地面に足を広げて座り、皿をそっと両足の間の地面に置く。ローアングルで首の後からのショット首を近づける。 | この舌…毒を放つ赤い蛇の様だったのに、もう動かない、喋らない、ヨカナーン…あんなに私に毒を吐きかけたのに…不思議ね…どうしてこの蛇は動かなくなったの?…ヨカナーン…その舌でお前は私を拒絶し、売春婦のように罵った…サロメ、ヘロディアスの娘、ユダヤの王女を! |
■サロメ |
70-1:生首と顔を付き合わせたサロメの横顔。 71-2:生首を空高く放り投げるイメージOLで挿入 |
それも、もう良い、お前は死んだが私はこうして生きている。お前の首は私の物…好きなように出来る。 犬にだって…鳥にだってくれてやることだって出来る |
■サロメ |
72-1:70-1と同じアングルで生首の両頬を手で覆ったサロメ。 |
お前は私が世界でたった1人愛した男だった。他の男には嫌悪しか感じなかった…お前は美しい…銀の台座に載った象牙の柱のようなその身体…白銀の百合と鳩たちが満ち満ちた庭園……その身体ほど白い物、その髪ほど黒い物、その唇ほど赤いものはこの世になかった。 |
■サロメ ____________ 別撮り ■ヨカナーン |
73-1:『神』の前に跪くヨカナーンがOLで挿入される。 |
この口は不思議な香りをふりまく香炉、お前を見ているだけで聴いたことの無い音楽が聴こえてきた…どうしてお前は私を見てくれなかったの、ヨカナーン?お前は細い手と冒涜の言葉でマントの様に顔をくるみ、その目は神の姿しか見てなかった。そう、お前は神を見ていた…、 |
■サロメ ■ヨカナーン |
73-2:恋に落ち抱きしめ合うサロメとヨカナーンのイメージがOLで挿入される。 |
私を、私を見ようとはしなかった…見ていたら恋をしたはずなのに…私がお前を見たように。そして私は愛してしまった。…どんなに愛したことか…今でも…ヨカナーン…お前だけを愛している… |
■サロメ ■ヨカナーン |
73-3:ヨカナーンの裸の上半身、求めるサロメの腕から遠ざかって行くイメージがOLで挿入 |
わたしはお前の美しさに乾き…お前の身体に飢えた、ワインと林檎では満たすことが出来ない欲望。どうすれば良かったの?洪水も大海も私の情熱を潤すことは出来ない…私は王女だったが、お前に軽蔑された。処女だった、だがお前は奪った…純潔だった私を恋の炎で包んで… |
■サロメ ■ヨカナーン |
73-4:ヨカナーンの首に覆い被さるように上体を被せるサロメ |
あぁ!あぁ…どうしてお前は私を見てくれなかったの?見ていたら愛してくれたはず…そう、私を愛してくれたのに…愛の神秘は死の神秘より大きいもの… |
■サロメ ■ヘロデ |
74-1:サロメの姿がZOしながらFOしてヘロデの顔 |
ヘロデ「あれは化け物だ…お前の娘は。…聴け、あれは化け物だ。事実、あれのやったことは大きな罪…まだよく判らぬ神に対する犯罪だ。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ |
74-2:ヘロデの顔側面ヘロディアスの顔正面 |
ヘロディアス「私は娘と共に喜んでおります…あれはよくやりました。ここで見ていてやりましょう。」 |
■ヘロディアス ■ヘロデ ■奴隷1 ■奴隷2 |
74-3:ヘロデたちをフルサイズで |
ヘロデ「おぉ!兄の妻が何か語っておる…来い!こんな処に居られるか。必ず怖ろしい禍が降りかかってくる… マナッセ、イサッカー、オジアス、灯を消せ。わしはあんな惨いものを見たくない…灯を消せ!月を、星を隠せ! |
■ヘロディアス ■ヘロデ ■奴隷1 ■奴隷2 |
74-4:ヘロデたちの背後から。奴隷たちは松明を消す。星も光を失い、黒雲が月を覆って舞台は暗くなる。王は階段を上り始める。 | 宮殿に隠れよう。ヘロディアス、わしは心底怖ろしくなってきた。」 |
■サロメ |
75-1:月の光が一筋サロメに落ち、彼女を照らし出す。 |
サロメ♪キスしたよ、ヨカナーン お前とキスをしたよ お前の唇は苦い味がした これは血の味 それとも恋の味 恋は苦い味がするという でも そんなことは何でもない、何でもない 私はお前とキスしたよ ヨカナーン お前の唇にキスしたよ |
■ヘロディアス ■ヘロデ ■奴隷1 ■奴隷2 |
76-1:振り返りサロメを見て |
ヘロデ「その女を殺せ!」 |
■サロメ ■兵士 1 ■兵士 2 ■兵士 3 ■兵士 4 |
77-1:兵士が突進し、その盾でサロメ、ヘロディアスの娘、ユダヤの王女を押し潰す |
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■ヘロディアス ■ヘロデ ■奴隷1 ■奴隷2 ■サロメ |
78-1:ヘロデたち去る。只1人ヘロディアスが振り返り死んでいるサロメを見る。 スタッフロールと共にヘロディアスの歌が流れる |
♪あそこで死んでいるの もう1人の私 幸せそうに 微笑んだままで あそこで死んだの 私の娘が 不幸せも知らずに 愛情も知らずに |
■ヘロディアス ■サロメ |
私は恐れてた 可哀想なあの子を 枯れしおれる花びらと ほころぶ蕾 あそこで死んでいる もう1人の私 幸せそうに 微笑んだままで |
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