第1章 2001.6.6-1 白谷雲水峡へ
朝6時に起きてTVの天気予報を観る。大雨、雷、洪水の注意報が出たままだ。
うーむ。とりあえず顔を洗って、ぼつぼつと準備をする。
7時半から朝食。夕べの方と、もう一人若い方と三人でテーブルを囲む。結構、
豪華な朝ご飯だった。そそくさと部屋に帰り、8:28のバスに乗ろうと準備を続ける。
が・・・・8時過ぎにめっきり激しくなったスコールに躊躇しているうちにタイムアウト。
HPで仕入れた時刻表にある10:26に乗る事に決めて、本から地図を手帳に書き
写す作業をする。幾分穏やかになった雨の中、ゴアテックスの雨具など完全武装で
出る。(出る前に母屋でお金を払う=6800円。アジアの編み笠がおばさんに受けた。)
★
バス停で時刻表を見ると「10:26白谷雲水峡行き」は「日祝学休日運行」となってた。
もしかして・・・栗生橋行きのバスが来たので、運転手さんに聞いてみた。やはり、
今日は無いバスだった。見間違えたか・・・・。次は13:06、白谷小屋までついて泊まり
なら、なんとかなるか・・・。時間が空いたので公園内の東屋に陣取り、昼飯と飲み物
を買ってくる。雨も弱くなって、少し落ち着いて来た。
港でゴボゴボ、ヒューと音がしているのが聞こえてくる。潜水服の中の音のようだ。
スピーカーがあるらしい。観光で潜らせてるのだろうか?音を遠くに聞きながら、朝
からの経過を書きとめる。いい時間の使い方だ。雨もあがったので雨具をしまう。
★★
13:06、白谷雲水峡行きのバスが来る。女性の運転手さんだ。乗客は私だけ。
昼からは少ないのかなあ・・と思いつつ乗って行く。
バスは『バスじゃ無理だろ!』と突っ込みを入れたくなるような、急な曲がりくねった
坂道(おまけに所々工事中だし)を、乗降客も無く、貸し切り状態でスムーズに
登って行く。荷物が多いので運転手さんが料金表を雲水峡に変えたとたんに料金
530円を入れさせてもらった。バスを降りると白谷雲水峡の入口。案内所があった。
設備等の維持や整備の為の協力金300円を払うと、地図が描かれたパンフを
くれて、何処まで行くのかを聞かれる。帰りのバスが1時間くらいで出るからかと
思ったが、そうではなくて、午前中の豪雨で沢が増水しているからだった。
「白谷小屋まで行って泊まります。ゆっくりビデオを撮りながら行きますので・・」
「じゃあ、登山届書いて。」
と言われて用紙を渡される。住所、氏名、行き先等を記入する。
「ビデオを撮るんだったらねえ・・・」
と相談に乗ってくれる。あの時刻のバスで来たのは正解で、もし午前中に来て
いても、沢が渡れないので、景色の良い『原生林歩道』が通れない状態だった
らしい。午後になって水は引き始めているらしい。
「もう、いいだろう。行ってごらん。」
と強気のおじさん。おばさんは少し心配そうな顔。私の前に来た人には、
沢を渡らない楠川歩道のルートを指示していたのだ。
「じゃあ、もし最初の沢が渡れなかったら、引き返してさつき吊り橋から、楠川
歩道の方を行く事にします。」
「そうだな。最初が渡れたら、後も大丈夫だろう。」
と、おじさん。うーん、冒険の匂いがする・・・!
入口から入るといきなり滝が轟々と音を立てている。入口から入ってしばらくは
『自然観察道』という大変整備されて公園の中の道みたいになった部分。けれど
ここらでも、見える景色は半端なものでは無い。もう、人間に例えるならトップ・モデル
クラスの美人が列をなして向かってくるのだ。樹さん、苔さん、滝さん。滝はもう雨の後と
あって元気がいいし、大樹と来たら岡本太郎のサインが入っているのではないかと
いうような逸品が、艶やかな苔の衣裳をまとい、シダやら照葉樹やらを生やしては
こちらにウインクしているのだ。た、たまらん!・・・・
森全体の風情も最高で、いまにもモロ(映画もののけ姫に出てきた巨大な山神=狼)が
駆け下りて来そうな背景だ。と、撮りきれない・・・。
といってる間に『原生林歩道』にさしかかる。こちらはもろに登山道という感じの細い山道
なので案内所で教えてもらった目印のピンクのリボンがところどころに結んであるのを頼りに
迷わないように進む。樹をくぐり、岩を越え、沢の流れを飛び石で渡り、結構スリルを味わう。
片手にはDV、ウェストポーチにはデジカメ、何が壊れても浸かっても困るのだから・・・。
枝振りが暴力的な感じに力強く見事な『三本足杉』(三本の幹が集まってひとつになったように
見える)の所で最初の休息を取る。ここまでマイナス・イオンのシャワーの中、疲れ知らずで来て
しまったが、普段平らな所しか歩いていない足首くんがへらへら笑い始めているような気がした。
アクェリアスを飲む。これを干したら沢の水を汲むのだ。
昼なお暗い森の中で、あたりの植物やまとった苔から湿気が出ているのが体感できる。枝から
したたり落ちてくるし、苔に水滴が育つ。雨の名残では無い。水滴の滴りが美しい。後、レンズが
すぐに曇ってしまう。けれど湿気が嫌な感じはしない。ボーイスカウト以来の本格的山歩きだが
しんどい気持ちにはならない。むしろ、意識がさーっと鮮明になる。景色に興奮しているせいだけ
じゃあ、無さそうだ。
三本杉を出発。登り、降り、沢を渡る・・・の繰り返しである。濡れた木肌に滑って尻餅をつく。
手に泥がつくが、何だか汚く感じない。木目細かい手触りのせいか?あまり気にならないのだ。
足もとのぬかるむ湿地帯では石が一列に並んでいる。しかし、どんな厳しい歩行状況でも、景色は
どんどん攻めて来る。回しっぱなしでもいいようなものだが、ファインダーを覗いていたら谷底に
落ちるので・・・欲しい画は止まって狙う。とても嬉しい。あんなに観たかった景色が山のように
(山だが)あるのだ・・・到底観きれないくらいあるのだ。ああ・・・縄文のドラマを撮りたいとか、
あの苔の上に美女を横たえてとか、あの木陰で・・・とか切りが無い。目に映る景色に捨てカットが
ない!森の中の森だー!と感動しながら笑う足を操って湿原の飛び石を渡るのは、もう本当に
芸当なのだが、疲れ方が街を歩くのとは全然違うのだ。
『三本槍杉』(一本の倒木から三本の杉が生えている)を撮影している人達がいた。やけに大勢で
・・・あららベーカムみたい。プロの方ね。挨拶して通してもらう。
『奉行杉』で一休み、ベンチが作ってある。飴を食べていたら奥歯に填っていた合金の詰め物が
取れてしまう。とりあえず元のところに填める。食事ごとに気になったらやだな、憂鬱だなと思ったが
これを書いている6.29現在も取れていない。あまり気にもならなかったのは屋久島効果だったのか?
アクェリアスを飲み、防虫スプレーをふっておく。