2:08、蟹の恩返しか、リアルな淫夢で目を覚ます。そのまま続きを観ていたら
パンツ交換が必要になると意識下で思ったものか。
何やら天○屋令嬢のスキャンダラスな美女の物語、ヌード写真を世間に露出したり、
それが父親の差金だったり・・・膣口を舐める(舐められる?)快感が腰に響いて、
思わず目が覚めた。単にたまってるだけかなあ・・・。外では蟹が泡を噴いて悶絶
してたりして・・・などと落語のオチになりそうな事を寝袋の中で考えている。
あたら大自然の中で何を考えているのか・・・旅の準備中に読んだ『志ん生艶話』の
せいか・・・。さすがに早過ぎるのでもう一度寝る。
★
いくつか夢を見てから5:23に目が覚めた。おじさんはいないようだ。山の朝は早い。
湿度が高いのか、身体から離していたズボンと靴下は湿った感じがする。靴下は
履き替えることにする。今のところ雨は降っていないようだ。が、メモ帳もしっけている。
モノを床に置いてはいけないのだな。高い所に上げておくのが正解なのだろう。
夜中に裸足で歩いたせいか足を2ヵ所蟻にかまれている。まあ、これくらいならと
アレルギールをつけておく。
水場で顔を洗い、カロリーメイトの朝食を食べていると夕べのおじさんが帰って来た。
どこかに行っていたようだ。
「寝れた?」
と、おじさん。
「はい」
「あなたもカロリーメイトが主食?北海道から来た若い人でカロリーメイトしか持ってきて
無い人がいたよ。『それで持つ?』と聞いたら『腹は減るけど栄養とってるという気がして
大丈夫です。』って言うとったわ。」
「とりあえず、場所をとらないから・・・」
朝の光りで見るおじさんは、どちらかというと、おじいさんだった。65〜70歳くらいかな。
背筋が伸びて元気そうな方だ。山荘の裏のほうに歩いていかれた。
★★
歯を磨き、マットやシュラフを畳んでザックに詰める。出発の用意。使った所の床を
備え付けの箒で掃く。『来た時よりも美しく』ボーイスカウトで教わり、芝居で場所を
借りる時にみんなに伝えた言葉だ。綺麗になった。
おじさんの姿は見えなかった。
「御世話になりました!」
大きな声をかけておいて6:55に山荘を出発する。朝日が森に射し込んでいる。
天気に感謝する。
辻峠に向かう。途中の景色はやはり素晴らしい。そして朝を歌う鳥の声、水の流れる音、
葉っぱの風に鳴る音。澄んだ(しかし、何かに満ちた)空気。休息する良い場所が無かったので
辻峠に急ぐ気持ちで、少ししんどい。息が荒くなってくると足を止めてカメラを構える。被写体は
無数にある。ビデオカメラを手に持って撮りながら歩く。
レンズが曇るのは、自分の荒い息のせいもあるかなと思う。7:15辻峠に着いた。
楠川分かれ(縄文杉へ続くトロッコ道からの分岐点)への道は大きく黄色いロープが張られて
いた。一瞬、雨で通れなくなったのかと誤解したが近づいてみるとロープの脇に続いている
細い部分を歩いて行けという事だと判る。予定通り、絶景だという太鼓岩に向かうことにする。
ちょっとストレッチして行こう。林に陽が当たり始める。ちょっと曇っていたのだが、再び晴れて
来た。これも蟹さんの恵みかも知れない。あるいはヘチマの祟りか?(I織氏とM穂さんがくれた)
7:45、太鼓岩に向けて出発。潅木の中を、上ったり降りたり、本当にピンクリボンと小さな杭が
頼りの道無き道というか、判りにくい道を迷いながら行く。荷物が引っかかったりするくらいの
所を抜けて行くので、覚悟してビデオをしまい、軍手をはめ両手を使って進む。アスレチックな道だ。
どのくらいかかるのか判らないのもしんどさを増す。が、ぼつぼつだなと先が読めてくると楽になる。
8:10・・・太鼓岩に到着。絶景だ・・・・!
その景色の素晴らしいこと!景色の遠く小さい事・・・高所恐怖症の私には素晴らしすぎて足が
震えるくらい山や木々が小さく見える。が見とれている間に、どんどんガスが出てきた。
慌ててビデオとデジカメを取り出して撮影する。ガスが迫ってくる。ぼちぼち降りた方がいいかも。
ザックを持つと湿っている。木を持って道を進む際に枝が揺れて水滴が落ちるのだ。上りは上が
見にくいので外していた編み笠を被る事にする。水滴がパタパタと音を立てる。ホトトギスが鳴いている。
日本の森だなあ。TV以外で聞いたホトトギスの声では抜群の美声だった。声に艶と張りがある。
8:47辻峠に着く。下りは道を知ってるせいか早く感じた。ここでもガスが出てきたようだ。早めに
降りることにする。少し降りていると木洩れ陽が射してきた。
9:25、白谷山荘への分岐点に親子らしき男性二人。挨拶を交わす。軽装がうらやましくもある。
くぐり杉のところのベンチにザックをおろし、腰掛けて休憩する。何が重いといって、調子に乗って
買いすぎた薬品類が余分に重い。備えあるに越したことはないが、過ぎたるは何とやら・・・。
陽だまりにいると服や身体から蒸気があがっているのが見えた。ダイエットにはなったかな。
木洩れ陽が地面に映す影が繊細で微妙だ。いくつもの木のいくつもの葉を透かしてくるからか?
座って見てるととやすらぐ・・・安心する・・・不安がない。深い森の中にいるから。原始の記憶。
「ガーッガーッ」と声を立てて行くのはヤクザルか?姿は見えないが水滴がぱらぱらと落ちてくる。
9:40出発。楠川歩道は昔、材木の切り出し用の運搬路として使われていた道で原生林歩道よりは
歩きやすい。それでもよろけて1、2歩踏み間違えたら谷底に真逆様・・・というところは珍しくない。
手からの蒸気でもレンズが曇る。10:25楠川歩道から『自然観察歩道』への分かれ道に到着する。