第8章 6.8-4 夜の浜
サンゴを少し拾ってテントに帰り、バナナとソーセージを食べる。さらに「アーモンドと小魚」を齧りつつ浜に向かう。懐中電灯を持ったおじさんがいらっしゃった。 「こんばんは、・・海亀ですか?」 とたずねてみる。おじさんは海亀の監視員だった。テントの横を車が通ったなとは思っていたのだが、地元の消防団の方が交代で海亀の監視をして、観光客に場所を教えたり、産んだ卵を適した所に移したり(海亀は自分が産まれた場所に卵を産みに来るので、昔と変わって産みにくくなっているところへ産んでしまったら、子孫が苦労をすることになるのだ)をされているということだった。昨夜も、ここに海亀が上がって、向かいの海水浴場の方で待っていた観光客を連れてきたらしい。ええ!じゃあ・・・海亀の産卵が見られるかも知れない!若干ドキドキしてくる。 「海亀というと永田のいなか浜が有名ですよね?」 「あっちは県外から来て民宿しとる人が宣伝してやっちょるから、こっちは町がやってるから」 予算が違うようだ。前は同じ位海亀が来ていたが、今は港を作って浜が三分の一になったため、少なくなったという。浜のこっち側は黒い岩とサンゴの破片が多く。砂地が少ないので干潮になったら亀が上がれないらしい。 「9時半から10時になったら海水浴場側がいいよ」 うーむ。歩くと遠いのだな・・・。他にも色々と教えてくれた。 |
海亀は一度に100個以上卵を産むらしい。おいしいので昔はみんな盗って食べていたという。 中学生の頃は度胸試しに、卵を産み終わった海亀の産道に海水で洗った手を突っ込むという無茶も していたらしい。卵の残りが10個くらいと、まだ大きくなってない、色が赤っぽいのがあったという。 産卵の時期、海亀の体内には卵になるものが400くらいあるらしい。朝、卵を生んで帰る雌を、雄が すぐ沖で待っていて、早速交尾をするのをよく見たという話だ。産んでは受精を繰り返し、一シーズンに同じ雌が4回くらい上陸、産卵をするわけだ・・・大変だなあ。この時期(6月)の卵は孵らない。 梅雨で砂浜が充分に暖まらないせいらしい。あ、蛍だ・・・海の上を飛ぶ蛍を見た。 おじさんによると、もともと屋久島には蛍はいなかったんだけど他から持ちこまれ、沢のカワニナなどを食べて増えたらしい。・・・海の上を、ただ一匹光の尾を曳いて飛ぶ蛍は何かエモーショナルな 光景だった。 山へ登ったと言ったら、シャクナゲの事を聞かれた。バラのように花びらが重なり、つぼみは赤く、最後は白くなるというこの花を、島の人はみんな楽しみにしてるらしい。山が花で赤く染まり、島の 人は花を持って帰って冷蔵庫にラップして入れるのだという、見たいときに取り出し、眠りから覚めて 花が開くのを楽しむ・・・本当に愛してるのだなあ! 「まだ上がって来ませんね」 「ゆべはあそこらへんに上がったんだがな。雌は昼のうちに、産む場所を下見するんだ。」 「亀は産まれた浜に必ず帰ってくるんですか?」 「だけど、今は浜の様子が変わったからテトラポッドに引っかかって上がれん亀も出てくるんじゃ。朝方見つけて話してやったら産めなかった卵をポロポロこぼしながら沖へ帰っていった・・可愛そうな事じゃ・・・」 自然の力で地形が変わったのではない、人間が変えたせいで亀も危機に瀕しているわけだ。 「ありゃ、ライトで浜を照らしとる!あんなことしたら、よけーに上がってこん!」 おじさんが向かいの海水浴場を見て怒っている時に、監視仲間の人らしき男性がやってきた。海亀の監視にも色々と問題はあるらしい。ただ、地元同士の鹿児島弁は聴いててなかなかわからない 「永田は浜に入っただけで1000円とっとる。」 「そこまで・・・」 「補助金ももろうとるのに・・・」 海亀もビジネスなんだな。栗生でも町おこしをしたいのだが、永田のようにリーダーシップをとって プロデュースする人がいないようだ。・・・生臭い話になってきたなぁ。 「浜のほうへ行って見たら、おるかも知れんよ。波打ち際から跡がついとるからすぐわかる。」 浜へ行くがまるで上がった様子は無い。時刻も21:30、テントに帰って寝ることにする。 海亀は別に人の為に卵を生むわけではない・・永田へ行くのはやめよう・・そう、思った。 「夜はマムシが歩道に出てくるから、足元をライトで照らしながら行ったほうがいいよ。」 言に従いライトで照らしながら帰ってゆく途中でトイレに寄った。 |
トイレの明かりに誘われたか、巨大な蛾がとまっている。デジカメでとる。やや、ムカデも・・・ ライトのスイッチをさがしてトイレを済ませる。 なるべく明るいあたりに張った方が蚊がこなくていいよとのおじさんの忠告だったが、林の中に 立ててしまっていた私は、3ヶ所ほど蚊に食われながらも眠りについた。そうそう、マムシもでるらしい・・・星が出ていた。明日晴れだといいな・・。 |