「演劇のつくり方」講座


『演劇のつくり方』講座 事始めの記



【2017】

私が脚本・監修を担当した「KAYA−温羅の伝説」の初演(RSKバラ園外苑)が概ね大成功に終わり、古市福子さんがご自身の朗読会で「人魚の話」を読まれ、全国各地の中高4校で「芥川龍之介版-桃太郎-」 「16歳・ナガサキの夏1945」が上演されるという知らせが来て、劇作家としては、なかなかに幸せな気持ちだった2017年の初秋……私は『演劇のつくり方』講座をスタートする事になりました。

芝居にスタッフで加わったり、何度も客演させてもらい、また『不肖の弟子』と称して勝手に私淑してきた『恩師』藤澤陽一さん  が、山陽新聞カルチャープラザ本部教室で続けて来られていた演劇講座を体調不良で辞められることになり、名前を出してくださったのか、私がカルチャープラザから後継を打診されました。

その前の年、2016年にpersona blanca幻日会という仮面劇ユニットふたつを解散し、戯曲に専念して劇団の現場からは距離を置こうとしていた私ですが、藤澤さんのリリーフで生徒さんを引き継ぐことになるかも……という想い、また以前、中学生相手の映像講座などやっていた経験で、教えるとは言いながら、生徒さんと一緒に何かを考え、学んでゆく楽しさを知っていた事から「講座という形なら……」と考えて承諾の返事をしてしまいました。

お話があって、まず思ったのは平日の午後という仕事してる方の多くは参加しにくい時間帯に、どんな方が来られて何を求めておられるのかということ……こちらで想像も出来ないので1回目の講座で自己紹介を受け、アンケートを書いてもらう事にしました。ポイントの高い物から優先的にプログラムに入れて行こうと……ある意味、オーダーメイドな講座になればいいな……と考えました。定員2〜6名様にしてましたが、最初の日は受講者3名様と見学者2名様。受講者のうち1名様は「誰も来なかったら……」が怖くて「良かったら……」と声をかけた知人だったりしました。

ONIビジョンで「KAYA-温羅の伝説」が放映されたりを挟んで9月第4木曜の2回目を迎えました。

まずは前回、ニーズのアンケートを取った時にポイントトップとなった「戯曲書く」に重点を置くことにして、戯曲についての理解のため、先ずは朗読をと、拙作「人魚の話」と訳した「サロメ」の若干短縮したバージョンを用意。私が一通り読んだ後、広い部屋の四隅に散らばり、役を分けて群読してもらいました。それぞれの方の才能も垣間見えて、今後が楽しみに……



   私の講座の広告画像をカルチャーのサイトで確認。これは国際ホテルの庭でパフォーマンスに参加した時のもので、ドラゴンの被り物が私だとは誰もわかるまいな代物(笑)。


11月、受講生に「小説とかマンガとか、何か原作の戯曲化でも良いから」とお願いしていた戯曲の第一稿が集まりました。どなたも思ったより、マンガの戯曲化、短編小説の戯曲化、そいてオリジナル。しっかり書いて来られていて、これは良い戯曲が出来そうだと期待。この間、初回に見学に来られていた、藤澤さんが講師の頃に教わっていた方が正式に参加され、受講生が1人増えました…。そして3ヶ月の区切りで卒業された方が1人。

12月、それぞれの戯曲を来年どういう形に仕上げるかを決定。ラジオ・ドラマ(生放送型式)、切り紙アニメでアフレコ、そして演劇形式、ブルーバックで映像仕上げの仮面劇を一本、体験してもらうことにした。
11月、受講生に「小説とかマンガとか、何か原作の戯曲化でも良いから」とお願いしていた戯曲の第一稿が集まりました。どなたも思ったより、マンガの戯曲化、短編小説の戯曲化、そいてオリジナル。しっかり書いて来られていて、これは良い戯曲が出来そうだと期待。この間、初回に見学に来られていた、藤澤さんが講師の頃に教わっていた方が正式に参加され、受講生が1人増えました…。そして3ヶ月の区切りで卒業された方が1人。

12月、それぞれの戯曲を来年どういう形に仕上げるかを決定。ラジオ・ドラマ(生放送型式)、切り紙アニメでアフレコ、そして演劇形式、ブルーバックで映像仕上げの仮面劇を一本、体験してもらうことにした。

11月、受講生に「小説とかマンガとか、何か原作の戯曲化でも良いから」とお願いしていた戯曲の第一稿が集まりました。どなたも思ったより、マンガの戯曲化、短編小説の戯曲化、そいてオリジナル。しっかり書いて来られていて、これは良い戯曲が出来そうだと期待。この間、初回に見学に来られていた、藤澤さんが講師の頃に教わっていた方が正式に参加され、受講生が1人増えました…。そして3ヶ月の区切りで卒業された方が1人。

12月、それぞれの戯曲を来年どういう形に仕上げるかを決定。ラジオ・ドラマ(生放送型式)、切り紙アニメでアフレコ、そして演劇形式、ブルーバックで映像仕上げの仮面劇を一本、体験してもらうことにした。


【2018】

『形にする』がテーマ。1月から、演技の基礎をぎゅっと凝縮して、ストレッチ・準備運動から発声(随分久しぶりに外郎売りも……)、歌、マイム、エチュード、即興劇、即興演奏、ダンスのチップや、簡単な創り方、各種受け身、マット運動、簡単なアクション、護身、棒で剣殺陣の基本……などをサンプル的にざっとさらいました。かなり駆け足。最も参加したかっただろう役者志向のKさんが愛犬の看取りということで欠席は残念だが致し方ないところ。

2月は4編のマンガ原作戯曲を仕上げて来たAさんの作品から『脱走兵のいる家』を効果音などリアルタイムで合わせる生ラジオ・ドラマ風に録音して仕上げました。

3月、Fさんの戯曲(冒頭部分)を切り紙アニメ化中…ワンちゃん看取りからKさんが復帰されたので、いない間にやった演技基礎やアクション、ダンスをちょこっと体験してもらいました。





4月第2週に切り紙SFアニメのアテレコ本番。準備で一昨日は徹夜…F氏の脚本「9−ナイン」(拙作=岡山ピースアクトで東京公演した『9 ナイン〜サイボーグ戦士外伝』の続編をF氏が書いたもの)を切り紙アニメで映像作品にしてプロジェクターで映写しながらのアフレコを講座生3名+見学者1名様に体験して頂きます。皆様なかなかの腕前で楽しく録音終了。時間が余ったので役を交換したのもやってみたり……音声ファイルは映像と合わせてyoutubeで講座生のみの限定公開にしました。見学された旧知の女優さんも受講を決められて4名体制に。





次に取り掛かったのは某有名俳優の書かれた小説が原作というKさん作の短い二人芝居『知らないおばさん』。これを素材に照明や音効等含めた上演に伴う色々を体験して頂く…というプログラムとしました。基本は設備の整った劇場ではないスペースで演劇を上演するという設定として……音効+音響の要素もと、ノートPCに入れたフリーDJソフトと変態オーディオシステム(とてもコンパクトな中国製のデジタル・アンプ〈8Ωで100W×2〉を2台買い、ワーフデールのTitan8の色違いペアと車載用サブウーファーのペアに繋いだ2.2chシステム)を持ち込んで、配線繋いだり〜音効さん体験をしてもらいました…照明体験はDMXコントローラーと繋いで使うLEDパーライトを脚立等にセットして…「こんなんでも何とか可能です」レベルでやってみました。



7月12日。お客様役に2名の方に来て頂いて、私の演出する2組(ペアが役者で残りペアが照明・音効、役者とスタッフ役を交代での2パターン)の同じ作品を朗読劇を挟んで上演する形の公開稽古にし、照明・音効プランは、用意できる機材と準備した曲で、それぞれスタッフ役のペアごとに練ってもらいました。間に挟む朗読劇は『人魚の話』で、Fさんに照明を頼み、女性3名で朗読、音楽・効果音は私が民族楽器の生演奏で担当という形です。教室は窓が大きくブラインドしか無いので暗転は難しく、照明の効果に難がありましたが、受講生の皆さんの熱演もあって、まずまず、ちゃんとした演技、ちゃんとした上演になったのではと思います。

仮面劇『SALOME』超短縮版 。7月26日に仮面選びから始め、着物を主なモチーフとした衣装を着け、予め録音した音声に合わせて、女優3名の配役ずらした3パターンをグリーンバックの前で12月に通し収録。毎回グリーンバックの枠だったり、衣装や仮面の大荷物を持って行くのが大変でした……吉備津神社版の「KAYA」は新しく演出された風早さんと脚本の直しを打ち合わせたり、記録撮影の下見や着ぐるみの改良などで稽古にも足を運んでましたし、9月の「KAYA」再演本番過ぎると9台のカメラで収録した記録映像の編集作業があり、民謡公演の記録動画編集もあり、ここから半年くらいは、ずっと時間に追われてしまいました。

【2019】

『企画』を立てて実現への道のりを考える……をテーマに始めましたが、自身で作る前にいろんな劇作家、劇の作り方について知りたいという意見が出て、まず『作家論』をやることにしました。私が語れそうな大物ということで『寺山修司』『つかこうへい』『野田秀樹』の三人をメインに、多角的に戯曲や作品の個性、思想、表現方法を体感的に考察しました。

Nさんが(寺山修司的書簡演劇として)「私にラブレターを書いて」という宿題をみんなにリクエストしたので、ささやかなホワイトデーの用意と共に、(男性含む)全員に書いてみました…紙とペンでこういうものを書くのは随分久しぶりです。書いてみると、あんまりラブレターでもないかな…と。「ま、いいか」


「演劇のつくり方」講座「企画」編。↑Aさんの架空企画のパンフや芸術祭応募書類など、これはなかなか面白く出来ていると思いました…企画のみの物、実現へ持ってゆく物…色々あったのですが、NさんとFさんでやってもらう「講座CM」企画が、Nさんの仕事都合欠席で進んでいなかったのを、素材をこちらで選んで動画PCごと持ち込み、その場で考えてもらって編集しようとしたけれど…ちょっと時間が足りませんでした……一応出来たところまでの材料を繋げた動画をYouTubeへ限定公開で上げ、Nさんに順番などを考えて来てもらうようにしました。

「KAYA」DVD予告編をYoutubeに上げたり、拙作「夢幻の薔薇」(世阿弥、足利義満、楠木正儀を描いた夢幻能的な作品)を名古屋の劇団が演劇教室発表会で上演そして舞踏の古関すまこさんの生徒さん達との公演の収録・編集も進めつつ、講座の方では『企画』と『表現』、そしてワヤン・ゴレックというインドネシアの棒操り人形を使った『人形劇』体験を何回か行い、古典の勉強という事も含め、『企画して実現させる』講座として古典・シェークスピアを原作にそれぞれが作品を作り、お客様を何名様か来て頂いて上演する事となりました。

古典とはいえ、翻訳者の方の著作権があったりしますので、講座で生徒さんに使って頂くために(Aさんが一人芝居にした)「ハムレット」(Fさんが音楽劇にした)「真夏の夜の夢」(Nさんが人形劇にした)「ロミオとジュリエット」(Kさんが現代劇と絡めた)「リア王」のそれぞれ一部を(2011年のサロメ翻訳以来、久しぶりに)日本語訳してみました。ちょっとだけシェークスピアとの心の距離が縮まったかも知れません…(?)

ロミオとジュリエット(バルコニー場面のみ)  

◆ハムレットの有名なセリフ 白神訳

おめおめ生き続けるか、潔く世を去るか、答えはどちらだ?
心の中で、どちらの答えが貴く響く?
暴虐な運命の矢弾(やだま)に耐えて生を繋ぐか、
苦難の荒海に刃を振るい、戦って果てるのか……
死は……眠り、それだけのことだ。
そう、我らに終わりを告げる眠りだ。
この痛む心も、千の苦しみが突き刺さる肉体も、
死ぬ、眠る、それだけのことで手に入る幸せな終わりを待ち望んでいる。
……だが、眠れば夢を見るだろう。それが気にかかる。
人生のしがらみを解き、ようやく死の眠りについても、
そこにどのような夢が待っているのか、そう思えば足も竦むというものだ。
こんな惨憺たる人生の途方もない長さに、人が耐え忍んでおられるのも、
その恐怖の存在故なのだ。
そうでもなければ、誰が一体……世間の辱め、権力の暴虐、
驕れる者らの横柄、切ない恋の懊悩、裁きの庭の馬鹿げた遅延、
役人どもの尊大さ、取るに足らぬお粗末な者どもからの
ひどい侮辱に耐えられようか?
我が身に短剣をひと突きすれば楽になれるのに、誰が重荷を背負い、
汗水たらし悲嘆の呻きを洩らしながら生きながらえる事が出来ようか?
もし恐れる物もなく死後を迎えるなら、
行きて戻らぬ世の果て=未知なる世界を恐れず、
見知らぬ彼岸に飛び渡るより、
いつもの様にこの世の煩いに耐える方がましなどと考えぬなら……と、
この様に思い惑う事が、我々に臆病風を吹かせる。
決断は生気を失い、陰鬱な色彩で塗り込められ、
あれほど意を注いだ重大な企ても、たちまち軌道を逸れ、
やがてその名さえ消え去ってしまうのだ……



発表会は『Shakespeare Show』ーえんつく沙翁抄ーと名付けて若干の宣伝も行い、当日は6名様に鑑賞して頂きました。やはり、お客様が居て下さる事は演劇にとって本当は欠かせない要素だと思っています。平日昼の講座故の難しさがありますが、お客様を感じ、その心を動かしてゆくことを少しでも体験して欲しいと思いました。

そういう事に初めて気が付いたのは、80年代後半、1年間「台本の無い芝居」を追求してみていた年のブギーシアターUの最終公演。クリスマスの日に岡山県総合文化センター(現・天神山文化プラザ)で公演した「渡星人伝」シリーズ完結作「征く星来る星」での一場面でした。

私は観客に背を向ける姿勢で洗濯機型の三面衝立に隠れて、女怪・黒い羊に囚われた主人公の少年を助けに、ジリジリと間歇的に近づいていた……と、手を離していた瞬間に背中が当たったのか、「洗濯機」が観客席側にゆっくりパタンと倒れてしまった。その瞬間に背中で感じたお客様の視線…から

黒い羊(玉取娘々)

「お前は誰だ!?」

私(被り物と白黒衣装に目には隈で振り向いて)

「お助けパンダだっ!」

もらった爆笑の気持ち良さだけでなく、「あれ?なんだこれ?」という……客席と繋がって劇場全体を俯瞰出来ているような感覚。これが(その前の総社公演の侍役でギャグ受けた時などでも若干感じ始めてはいたのですが…)『お客様を感じる』ということを意識し始めた最初だったと思います。

【2020

年明け第一回目の会議で、2020年度のメイン・テーマは『演出』と決めました。短い戯曲を書いてもらった中から選定し、同一戯曲を別演出で連続上演してみようという企画です。

一人新しく見学に来られたのがYさん。実はこの方が偶然にも、もう10年以上前に、リサイクルブティックのヤフオク店の仕事を辞めた時に、引継いで入られた方だったというシンクロニシティ!この方もですが、どうも3ヶ月終了の座学だと思って入って来られる方が多いので、戯曲執筆を進めてもらう最初の三か月の間は演劇の各要素をレクチャーする座学部分を設ける事にしました。
『演劇とは何?』演劇の要素を一つずつ減らしていって最後に残るものは?とか、『劇団』と『プロデュース公演』、『演技』と『演出』(「お日様、お月様、雷様が旅をした話」を題材に人を入れ替えて実践も) 『劇場』と『宣伝』、『スタッフ・ワーク』……
        ↓はんざき祭り特設野外ステージ「はんざき伝説」カーテンコール


ところが、しだいに世の中がコロナ禍でややこしく成り始めました……カルチャー・プラザも3/26休止から4/9は再開したのですが、4/23〜5/28まで再び休止。カリキュラムが大きく狂い始めました……医療職のNさんも受講を中止せざるを得なくなってしまい、受講生は再び4人になりました。

9月に岡山市民文化ホールで初の室内公演が予定されていた『KAYA』は早々と中止が決まり、映像と舞踏のコラボレーションをすることになっていた3/19のニシガワ図鑑『羊水の記憶』は、換気や消毒、マスク、客席削減などの対策を行って何とか開催されました。4月18日に予定していた(3月5日逝去された)藤澤陽一さんを偲ぶ会は延期となり、未だに目途が立っておりません……。

6月に対策基準を設けてカルチャープラザが再開されました。初めての講座で『どうする会議』を行い、若干規模を縮小し、1本の戯曲を同じ二人の役者、二人の別演出で2本連続で上演、お客様は公募せずに声掛けで2〜4名以内くらいのお客様に来ていただき、『模擬公演』とすることになり、コロナ休前に(登場人数とテーマで)選定したAさんの戯曲 『それでも馬は草を食む』 を使って稽古がスタートした。

プレゼンから選定して一番対照的な仕上がりになるかな……と演出役に決まったのはAさんとKさん。FさんとYさんが役者で出てもらう事になりました。ただ、演出チームが頭を悩ませたのは『感染防止』と『期間の減少』というファクターです。お話的にはマスク掛けても不自然では無いのですが、専門用語や説明も多い長セリフを覚えられるか……という問題もあって、演出2人とも、かなりの量の映像を使用する事になりました。

コロナで倉敷の『桃太郎のからくり博物館』の仕事も減り、映像製作の時間はあるだろう……と、思っていたのですが……古関さんの10/31の牛窓テレモーク『月下舞踏会』、12/1〜の宮崎さんのPORT ART&DESIGN TSUYAMA人形個展用の映像、古関さん12/4〜5の西川アイプラザ『降って来るッ!舞踏図鑑』、12/11故・林三從さんイベント、12/13古関さん津山のアトラクションと……映像(上映コラボ・記録編集)のお仕事が押し寄せて来て、講座用と合わせ、秋〜年末はPCと睨めっこの日が続き、かなり『修行』になってました……

この間、2020年11月 埼玉県の高校演劇部が「花交ヶ池」を上演。(↓2011年、幻日会の上演の様子)




「演劇の作り方」講座・2020年度模擬公演『それでも馬は草を食む』にはお客様役の方3名様に来て頂き、映像・照明・音響などスタッフ役を一手に担う、私自身の準備ミスがあって申し訳ない部分があったものの……受講生の方々が頑張ってくださって……二時間半くらいで搬入、仕込み、開場、本番、搬出まで済まさなければならない強行日程を、無事乗り切る事が出来ました。感謝。






講師:白神貴士の演劇史



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